2014 Fiscal Year Research-status Report
超高精度結晶構造解析によるプロトン輸送タンパク質の全水素原子位置決定
Project/Area Number |
25440020
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹田 一旗 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30332290)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 結晶 / タンパク質 / 界面活性剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロトン輸送は光合成や電子伝達、物質輸送などに関与する膜タンパク質に広くみられる現象であり、生命活動のなかで最も重要な素過程のひとつである。ところが、これらの膜タンパク質のプロトンや水素原子の位置情報は全く実験的に決定されていないこともあり、プロトン輸送現象の本質はいまだ議論の的である。そこで、代表的なプロトン輸送タンパク質であるバクテリオロドプシンについて高分解能X線結晶構造解析を実施し、タンパク質中の全水素原子の位置情報だけでなく、分極度などの精度の高い構造情報を実験的に決定して、プロトン輸送メカニズムを解明することが本研究の目的である。前年度に大型(最長辺約0.3mm)の結晶を作製することに成功しており、本年度は精製方法と結晶化方法に改良を加え、より短期間で収率よく大型結晶を作製できるようになった。多数の大型結晶を用意することは、X線によるダメージの影響の少ない回折データセットを取得するために必要である。作製した結晶を使用して、放射光施設にてX線回折実験をおこない、測定温度や露光時間、照射線量などの最適化をおこなった。また、回折データを解析し、結晶ごとの格子定数のバラつきやX線損傷による損傷の進行による統計値や温度因子の変化について研究した。その結果、X線損傷の影響が小さい1.3 A分解能の回折データセットを取得することに成功した。また、最大エントロピー(MEM)法解析プログラムの改良に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の目標は、測定温度や露光時間、照射線量などの実験条件を最適化して、多数の結晶から高分解能なデータセットの構築をおこなうことであった。放射光施設にて多数(~100個)の結晶から回折データを収集した。解析の結果、結晶同士の同型性が低く、複数の結晶から収集したデータ同士をマージして分解能を稼ぐことはできなかった。しかしながら、最も分解能の良い1個の結晶からの回折データのみを使用して、1.3 A分解能の回折データセットを取得することに成功した。これは、これまでに報告されているバクテリオロドプシンのX線回折データの中で最も分解能が高いものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に測定した1.3 A分解能のデータセットを使用して構造解析をおこなう予定である。この分解能でも温度因子の低い分子中心部の水素原子を観測できることが期待される。また、個々の非水素原子が分離して観測されるために、結合次数に関する情報を得ることが可能となる。一方で、タンパク質中の全水素原子の位置を決定するためには、1.0 Aより高分解能な回折データが必要である。測定温度や露光時間、照射線量などの実験条件を最適化し、同型性が高く分解能も高いデータを選別して1.0 Aより高分解能なデータセットの取得を目指す。
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