2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25440044
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
永長 一茂 金沢大学, 薬学系, 助教 (70401891)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 貪食 / 発生 / アポトーシス / ショウジョウバエ / 成長 |
Research Abstract |
死細胞の貪食除去には、多細胞生物に共通かつ必須な役割があると予想されている。研究代表者は、貪食受容体を持たないショウジョウバエでは貪食が著しく抑制されるだけでなく、個体が成虫になるまでに要する期間が長くなることを見出した。本研究では「不要な細胞を取り除くことで成長が促進する」という視点から解析を行っている。具体的には、貪食に依存した動物個体の成長期間調節の存在を示し、その仕組みを明らかにするための実験を行っている。 本年度は、死細胞を貪食した食細胞が成長促進因子を生産すると仮定し、貪食依存に発現が誘導される遺伝子群を見出すためのスクリーニングを行った。はじめにスクリーニングに利用する食細胞および死細胞を決定した。食細胞は、ショウジョウバエ胚ヘモサイト由来株のS2細胞に決定した。低血清培地での培養によりDraper経路、インテグリン経路という2つの異なる情報伝達経路を介した貪食能を獲得する特徴を持つからである。死細胞はシクロヘキシミド処理したS2細胞に決定した。同細胞ではアポトーシス細胞様の細胞死が誘導され、かつ細胞死依存に被貪食能を獲得するからである。次に、スクリーニング法を決定した。予算の都合で、当初予定したmRNA seq解析からより安価なマイクロアレイ解析に変更した。それによる定量性の低下に伴う擬陽性を排除するために、貪食反応に用いる死細胞を、mRNAを含まない死細胞断片へと変更した。 死細胞貪食前と後の食細胞からRNAを抽出してマイクロアレイ解析を行ったところ、約18500遺伝子中337遺伝子で貪食依存の発現量増加がみられ、うち延べ89遺伝子が成長促進に関係すると思われる遺伝子であった。 本研究成果は「貪食依存に発現する成長促進因子」の存在を強く示唆する大変重要なもので、目的達成へ向けた研究が順調に継続可能だとわかった点で意義深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究目的である「死細胞の貪食により動物個体の成長期間が調節される仕組みを明らかにする」ための第一歩として、「死細胞の貪食に依存した成長期間調節の存在」を示唆する結果が得られたからである。これは、本年度の研究が計画通りに遂行されたことを意味する。実験方法に多少の変更点があったものの、研究は順調に進展しているといえ、翌年度以降の研究遂行が可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により見出された334の貪食誘導性遺伝子のうち、成長促進に関係のありそうな延べ89の遺伝子群に着目する。これらについて、発現誘導機構、および成長期間調節機構を解析する。 前者については、主に培養細胞を用いて解析を進める。貪食受容体および貪食を導く情報伝達経路と遺伝子発現の関与、および遺伝子発現を促す転写調節因子の特定を目指す。 後者については、主にショウジョウバエを用いて解析を進める。候補遺伝子を欠いたショウジョウバエを作成し、成長への関与を調べる。 延べ89遺伝子の全てを同列に解析するには時間とコストがかかりすぎるため、文献やデータベース等で得られる情報などを元に遺伝子に優先順位をつけ、実験が容易なものから解析を行う。
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Research Products
(3 results)