2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25440061
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 正行 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50241295)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミオシン / フィラメント / 自己会合 / 細胞骨格 / 細胞運動 |
Research Abstract |
2型ミオシン(ミオシン II)は自己会合して双極性のフィラメントを形成することにより、アクチン細胞骨格を収縮させることができる。非筋細胞においてはこの形成が時空間的に制御されている。本研究はミオシンIIが双極性フィラメントを形成する際の素過程を分子レベルで明らかにすることを目的とし、今年度は以下の結果を得た。 (1)尾部の電荷クラスター領域N1、P1、P2それぞれの電荷逆転変異体(N1m、P1m、P2m)の細胞内ダイナミクスをFRAP法によって解析した。P1mとP2mは野生型に比べて非常に速い蛍光の回復を示したが、N1mは野生型とほぼ同様の挙動を示した。(2)尾部のコイルドコイルモデルに実際の電場をドット状に表示したところ、N1とそのN端側の負電荷に富んだ領域(N0と命名)を合わせた領域がかなり大きな負電荷の電場を形成していることがわかった。N1mが正常な挙動を示すのは、電荷の逆転が不足しているからではないかと考え、N1mにさらにN0を電荷逆転させた変異体N0-N1mを構築し細胞内での挙動を解析した。予想に反してN0-N1mは、野生型と同様にストレスファイバーに局在した。(3)ミオシンIIBの尾部フラグメントBRF305のP1内のアミノ酸のCys置換変異体(L1843C、R1846C)をBPIAでラベルし光架橋反応を行ったところ、二から四量体の架橋産物が形成した。(4)mCherry-ミオシン IIAとEGFP-ミオシン IIBをTIG-1細胞に同時に発現させ、それらの動態をタイムラプス法により観察した。遊走時に細胞の後方の伸びた部分にミオシンIIBが、最後方の部分にミオシンIIAが多く局在する様子が見られた。 以上の結果から、尾部の二つの正電荷クラスターP1とP2が双極性フィラメントの形成に重要であることがわかったが、負電荷クラスター領域については、今後さらに解析が必用である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の三つの観点、(1) 10S⇔6S構造変換の素過程、(2) 双極性フィラメント形成の素過程、(3) 細胞内における双極性フィラメントの時空間的形成機構の中で、今年度は特に(3)の研究で進展が見られた。 EGFPを融合させたミオシンIIBの電荷逆転変異体の生細胞での挙動をFRAP法を用いて解析することが可能になり、二つの正電荷クラスターP1とP2の双極性フィラメント形成における重要性が確認できた。負電荷クラスターN1については、今まで得られていた結果と同様に、野生型との違いが見られなかった。尾部フラグメントのコイルドコイル構造に電場をドット状に示したモデルから、N1とそのN端側のクラスターN0を含む領域がかなり大きな負電荷の電場を形成していることが明らかになり、N0-N1の二か所の電荷逆転変異体(N0-N1m)を作製し細胞内での挙動を解析したが、予想に反して野生型との違いは見られなかった。N0-N1領域が変異した場合、細胞内では、他の負電荷領域がN0-N1領域の変わりにP1、P2と相互作用して、双極性フィラメントを形成できてしまうのかもしれないと現時点では考えている。また、ミオシンIIAとミオシンIIBの細胞内での動態を生細胞で観察することも可能になった。今年度は、遊走時の尻尾に相当する後方の部分において、それぞれのアイソフォームが異なる動態をすることを明らかにできた。 (2)については、ミオシンIIBの尾部フラグメントのCys置換変異体をBPIAでラベルし、光架橋反応の条件を検討し、架橋産物ができることを確認することができた。 (1)については、今年度はあまり研究を進めることはできなかったが、今後につながる実験手法の確立、また、新たな視点も見出せており、本研究はおおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果を踏まえて、今後は以下のように研究を進めていこうと考えている。 特に、昆虫細胞発現系によって調製したリコンビナントの全長ミオシンIIをin vitroでMLCKによってリン酸化し、ATP存在下においてリン酸化に依存して会合・脱会合をすることを、今年度、確認できたので、これをベースに様々な変異体の挙動をin vitroで解析することを進める。 (1) 10S⇔6S構造変換の素過程:R1及びR2領域にCys残基を導入した尾部フラグメントを大腸菌発現系により調製しBPIAでラベルする。リコンビナント全長ミオシンIIとin vitroで混合し、10S及び6S構造をとった状態でそれぞれ光架橋を行う。架橋産物のマススペクトル解析を行ない、相互作用部位を明らかにする。 (2) 双極性フィラメント形成の素過程:N1、P1、P2の各電荷クラスター領域、及びnonhelical tailpiece部分の 一つのアミノ酸をCysに置換した変異尾部フラグメントを大腸菌発現系により調製し、(1)と同様に光架橋を行い、尾部間 の相互作用部位を特定する。静電相互作用エネルギーの計算を2分子以上の複数の尾部フラグメント間で行ない 、アンチパラレル、パラレル両方の相互作用を含んだ会合様式モデルを作製する。 (3) 細胞内における双極性フィラメントの時空間的形成機構:細胞内の様々な領域(遊走時の前方と後方、ストレスファイバーの中央部と両端)において、mCherry-ミオシン IIAとEGFP-ミオシン IIBの挙動を、二色の蛍光の同時タイムラプス及びFRAP法より詳細に解析する。各アイソフォーム及びそれらの各種変異体のKikume-GRコンストラクトを構築し、Photoconversion法により同様に解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3月に納品されて4月に支払われる消耗品を購入したので、次年度使用額として、7.479円が残った。 すでに、3月納品、4月支払の消耗品代として使用済みである。
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