2014 Fiscal Year Research-status Report
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25440061
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 正行 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50241295)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミオシン / フィラメント / 自己集合 / 細胞骨格 / 細胞運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2型ミオシン(以後、ミオシンII)は自己集合して双極性のフィラメントを形成しアクチンフィラメントを両方向から動かすことで、細胞形態の変化や維持に中心的な役割を担っている。ミオシンIIが双極性フィラメントを形成する際の素過程を分子レベルで明らかにすることを目的とし、本年度は以下の結果を得た。 (1)ミオシンIIのC末端尾部に存在する三つの電荷クラスター領域(負電荷に偏るN1、正電荷に偏るP1とP2)が、フィラメント形成に重要であると考えている。ミオシンIIBアイソフォームのそれぞれの電荷クラスター内の電荷を持つアミノ酸3残基の電荷逆転変異体(N1m、P1m、P2m)の細胞内での挙動から、P1mとP2mの重要性は確認できていたが、N1mは野生型とほぼ同じ挙動を示していた。本年度は、N1クラスターの重要性を判断するために、N1内に存在する7つのグルタミン酸残基全てをリシン残基に置換したN1m2、3つまたは7つ全てのグルタミン酸残基をアラニンに置換したN1mAおよびN1mA2をヒト不死化繊維芽細胞に発現させ、それらの局在を観察した。予想に反し、これらの変異体は野生型とほぼ同様にストレスファイバーに局在した。 (2)N1、P1、P2、それぞれの全長ミオシンIIBの電荷逆転変異体の昆虫細胞発現系を構築できた。(3)昆虫細胞発現系により精製した全長ミオシンIIBを用いて形成させた会合体が双極性フィラメントを形成することを、超解像顕微鏡(N-SIM)を用いた蛍光観察により確認可能なことがわかった。 (4)ミオシンIIAおよびIIBのC末端の会合に必須な領域を含む約300アミノ酸残基を交換したキメラミオシンIIを構築し細胞内での挙動を調べたところ、ミオシンIIAの機能はIIBの頭部によっても相補できるが、IIBの機能は頭部と尾部両方がIIBである必要があることを示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、研究実施計画の三つの観点、(1)10S⇔6S構造変換の素過程、(2)双極性フィラメント形成の素過程、(3)細胞内における双極性フィラメントの時空間的形成機構、それぞれについて解析するための準備(発現系の構築、方法の確立)を進めることができた。 (1)に関しては、R1、R2それぞれのアミノ酸残基の一部を10S構造を形成しない骨格筋ミオシンの対応するアミノ酸残基と交換した変異体の培養細胞内での発現系を構築した。 (2)に関しては、リコンビナント全長ミオシンIIB変異体(N1m、P1m、P2m)を昆虫細胞に発現させるバキュロウイルスを構築し、変異体タンパク質の発現を確認できた。また、精製した野生型のリコンビナント全長ミオシンIIBの調節軽鎖をMLCKによりリン酸化した後、 in vitroで形成させた双極性フィラメントを、超解像顕微鏡(N-SIM)による蛍光観察で簡便に観察する系を確立した。すなわち、ミオシンIIBのC末端尾部を認識する抗ミオシンIIB抗体および頭部を認識する抗リン酸化調節軽鎖抗体により双極性フィラメントを同時に蛍光染色すると、尾部の蛍光シグナルスポットが頭部の蛍光シグナルスポットによって挟まれた三つ組構造を観察することができた。 (3)に関しては、ミオシンIIAおよびIIBそれぞれのsiRNAノックダウン-レスキュー実験に用いるsiRNA insensitive ミオシンIIA、IIB、および、それらのキメラ変異体の発現系を構築し、アイソフォーム特異的な局在には、双極性フィラメント形成に重要なC末端尾部領域が主に関与していることを確認した。さらに、それぞれのアイソフォームの機能発現に重要な領域を細胞内で解析することが可能になった。 次年度の研究を進めるための準備をほぼ整えることができたと考え、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果を踏まえて、今後は以下のように研究を進めていくことを考えている。 (1)R1、R2、およびR1+R2変異体がどのようなコンフォメーションを取り得るのか、それらを EGFP融合タンパク質として細胞内に発現させ、それらの細胞抽出液を蛍光相関分光法(FCS)により解析する。R1またはR2変異体は、10S構造と6S構造の中間のようなコンフォメーションを取る可能性があると考えている。 (2)昆虫細胞発現系により、リコンビナント全長ミオシンIIB変異体(N1m、P1m、P2m)をそれぞれ精製し、会合能の塩濃度依存性を、超遠心法により解析する。ある程度会合した場合は、会合状態を電子顕微鏡および超解像顕微鏡により観察する。培養細胞内では、N1mはほぼ野生型と同様な挙動を示したが、これは、細胞内に存在する内在性の野生型ミオシンII と相互作用することによって起きてしまっている可能性がある。in vitroの系では、N1m変異体同士のみの相互作用を解析することができるので、N1クラスターの重要性を判断できることを期待する。さらに、N1m2、N1mA、N1mA2のリコンビナント全長ミオシンIIB変異体を順次構築し、精製タンパク質の性質を解析する予定である。また、N1m-P1m、N1m-P2m、N0m-P1m、N0m-P2m等のダブル電荷逆転変異体が復帰変異体にならないかを解析する。 (3)今年度できなかった、細胞内の様々な領域におけるミオシンIIAとIIBのダイナミクスの詳細な解析を、mCherry-IIAとEGFP-IIBの同時タイムラプスおよびFRAP法により行う。各アイソフォームおよび各種変異体のKikume-GRコンストラクトを構築し、Photoconversion法により解析する。
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Causes of Carryover |
年度末に細胞培養の培地等の購入を予定していたが、予定より少し伸びたので、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞培養の培地は4月中に購入済みである。その他の消耗品も5月中には購入する予定である。
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Research Products
(6 results)