2013 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリアの密集・分散が自身の活性に及ぼす影響
Project/Area Number |
25440065
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
太田 善浩 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10223843)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 卓也 立命館大学, 生命科学部, 教授 (70262102)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / ATP合成速度 / 活性酸素種発生 / 密集 |
Research Abstract |
ミトコンドリアは、細胞内を移動し不均一な分布をする器官である。機能はエネルギー産生や細胞死に関連し、活動には適切な制御が必要とされる。そこで本研究では、「ミトコンドリアの密集は、形成される電気化学的プロトン勾配を大きくするため、結果としてATP合成の効率化と活性酸素種の発生抑制につながる」という仮説を立て、その検証を目的とする。膜器官が自ら作り出したイオン勾配を利用して行う活動は、ミトコンドリアに限らず他の細胞内器官やバクテリアから多細胞生物の細胞に至るまで広範囲に行われており、本研究の成果には多くの方面への波及効果が期待できる。 平成25年度は次の2つの事柄、1)ミトコンドリアのATP合成及びH2O2生成速度に密集が及ぼす影響の計測、及び、2)その仕組みを調べるための準備、を行った。その結果、1)のATP合成速度は、密集により増大することが観察され、この効果は溶液の攪拌により失われた。また、ミトコンドリアは密集により分極することも示された。一方、H2O2生成速度は、ミトコンドリアの密集により低下した。これらの事実は、我々が建てた「ミトコンドリアの密集は、形成される電気化学的プロトン勾配を大きくするため、結果としてATP合成の効率化と活性酸素種の発生抑制につながる」という仮説を支持するものである。また、2)の仕組みを調べる研究としては、コンピューターシミュレーションによりミトコンドリア周囲のプロトン濃度を調べるためのモデルの構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミトコンドリアの活性が密集の影響を受けることは、当初の計画通り、以下の手順で調べた。まず、ミトコンドリアは活性の高い豚の心筋から単離し、ポリスチレンディッシュに様々な密度で吸着させた。上清に放出されるATPとH2O2の濃度増加速度を計測し、ミトコンドリア1個あたりのATP合成とH2O2生成の速度を求める。上清中のATP濃度はルシフェラーゼ・ルシフェリン法により、H2O2濃度はAmplex Redペルオキシダーゼ法により定量した。ディッシュに吸着したミトコンドリア数は、顕微鏡でミトコンドリア数をカウントすることにより求めた。 この研究に関する当初の予想は、ミトコンドリアが密集するとミトコンドリア周囲のプロトン濃度が局所的に高まるため、ATP合成速度が増大し、H2O2合成速度が減少するというものであった。平成25年度はこれに関しては、前述のとおり、ほぼ予定通り進めて予想通りの結果が得られたため、達成度は満足のいくものであった。 次に、ミトコンドリアのATP合成及びH2O2生成速度に密集が影響を及ぼす仕組みを調べるための、準備となる研究を行った。これに関しては、ミトコンドリアが密集により分極することを示すことができ、また、コンピューターシミュレーションによりミトコンドリア周囲のプロトン濃度を求めるためのモデルの構築、及び、ミトコンドリア周囲のプロトン濃度の計測のための準備を進めた。準備であるため達成度の評価は難しいが、概ね満足のいく結果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)単離ミトコンドリアを使用した研究 ミトコンドリアの密集がミトコンドリア周囲のプロトン濃度の上昇を引き起こして、H2O2の生成速度を減少させることを示すために、ミトコンドリア周囲の溶液を攪拌して密集効果が減少することを確認する。 2)細胞内での検証 ミトコンドリアが密集すると、ミトコンドリア1個当たりのプロトン汲み上げ量が小さく、膜電位の大きさが大きくなることを細胞内で示す。このために、プロトン汲み上げ量を蛍光計測で示すことが出来るようなプローブを捜し、検証する。問題となるのは、このようなプローブが見つかるか否かであるが、現時点で候補となる蛍光蛋白質を見つけており、厳密な確認後に、この蛍光蛋白質を用いて検証する。 3)コンピューターシミュレーションの実施 ミトコンドリアの密集により、周囲のプロトンもしくは正イオン濃度が高まり、ミトコンドリアのプロトン駆動力が大きくなることをコンピューターシミュレーションにより示す。
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Research Products
(5 results)