2014 Fiscal Year Research-status Report
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25440102
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
千葉 和義 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (70222130)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ポリA / ポリU / 減数分裂 / 卵簿細胞 / mRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、RNAの末端構造が厳密に制御合成できる手法を開発し、短いオリゴA-オリゴUの3’末端を持つサイクリンBを合成した。具体的には、T7RNAポリメラーゼが、3’末端にランダムにヌクレオチドを付加する反応を制御するために、反応液中のAPT濃度を高く保ち、末端がAで終了するように工夫した。さらにそれをゲルから切り出してからポリUポリメラーゼを用いて、末端がU化されたサイクリンBの3’末端RNAを合成して、これを卵にマイクロインジェクションしたところ、未成熟卵においては分解されず安定に保たれていた。さらに末端がU化されていないRNAも合成し、マイクロインジェクションしたところ、同様に安定に保たれていることが明らかになった。このことは、末端UがRNAの安定化に寄与しているのではないことを示している。すなわち、近年、一般に信じられている仮説「末端がU化されたRNAは不安定化する」は、ヒトデ未成熟卵においては該当しないことが判明した。さらに、マイクロインジェクションした卵をホルモン1-メチルアデニンで処理すると、GVBD後に速やかに脱U化されてポリA伸長が起こった。ポリA伸長は、翻訳に必須であるので、脱U化の生理的な意義は、ポリAポリメラーゼが反応できる短いA鎖を露出させることにあると考えられた。この結果は、交付申請書の仮説2「mRNA3’末端のUは、mRNAがポリA化されないようにはたらいている」が正しいことを示している。さらに本結果から、サイクリンmRNAのU化は翻訳抑制に働いており、体細胞で報告されているU化によるRNA不安定化も翻訳抑制に働くことを考え合わせれば、U化の生理的意義として、体細胞・生殖細胞ともに翻訳抑制の機能をもつことが本研究によって明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度の研究実施計画では、ホルモン処理によって活性化されるポリUを切り取る酵素を精製することになっていた。しかし初年度に、3’RNA末端の厳密な合成法の開発に予想外の時間を必要としてしまったために、本年度は前述の研究実績を得ることに集中し、U化の生理的な意義が翻訳抑制であることを明らかにした。この成果については、原著論文を作成中である。現在、3’RNA末端の厳密な合成法を用いてアフィニティー樹脂を作成し、ポリUを切り取る酵素の精製を行う実験を進めている。さらに本年度は、本科研費採択課題に関連したサンプルのシークエンスを支援いただくために、進学術領域「ゲノム支援」にも採択いただき、次世代DNAシークエンサーを用いて、卵母細胞中のサイクリン以外のmRNAも末端がU化されていることを明らかにした。この結果は、卵細胞の中においてはU化が、よく用いられる翻訳制御法であることを示唆しており、このことについても次世代DNAシークエンサーを用いてさらに解析を進めている。さらに、未成熟卵のサイクリンB合成は、卵の直径がおおよそ1/2の成長過程の卵において開始されることも明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画どおり、ポリUを切り取る酵素を同定し、その遺伝子を明らかにする。また未成熟卵におけるサイクリン合成において、U化されたRNAが関与しているかどうかについても明らかにする。すなわち、卵の直径がおおよそ1/2の成長過程の卵においてもサイクリンBのmRNAのU化は検出されているので、どのようにサイクリンが合成されているかを解明する。そのために次世代DNAシークエンサーを用いて、ポリA伸長したサイクリンmRNAを検出する。
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Research Products
(2 results)