2013 Fiscal Year Research-status Report
サンゴに共生する褐虫藻類オルガネラゲノムの環境変化に伴う機能調節機構の解明
Project/Area Number |
25440182
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
將口 栄一 沖縄科学技術大学院大学, マリンゲノミックスユニット, 研究員 (90378563)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | RNAエディティング / プラスチドゲノム / ミトコンドリアゲノム |
Research Abstract |
本研究では、温度及び紫外線照射ストレスによる、褐虫藻クレードBのオルガネラゲノムにコードされた17個の遺伝子のRNAエディティングの変化を調べる。この解析を行う上でオルガネラゲノムの配列を高精度で決定しておく必要がある。よって本年度は、これまでに得られていたプラスチドゲノム及びミトコンドリアゲノムとそのトランスクリプトームの解析を引き続き行い、それぞれの解析結果を論文としてまとめた。この解析は、主に連携研究者の協力を得て行った。 渦鞭毛藻類のミトコンドリアゲノムは、組み換えを起こしたものが様々な長さで存在していると報告されてきている。クレードBのゲノム概要配列の中には、約2kbpから40kbpの長さのミトコンドリアゲノム配列が20個以上存在していた。今回共同研究者の協力を得て、高いカバーレージを示すリード配列をさらにアセンブルすることにより、約291kbpの長いミトコンドリアゲノム配列を決定することに成功した。そのゲノム上には、cobとcox3遺伝子に加えて、rRNAのLSUの遺伝子がコードされていた。またそのゲノム上にトランスクリプトームをマッピングした結果は、ほとんどの領域が転写されていることを示した。それゆえ、cob、cox3、LSUの遺伝子はポリシストロニックに発現し、RNAプロセッシングをうけることにより3つのmature RNAとなっている可能性が考えられた。 よって今後は論文として報告予定のオルガネラゲノム配列を基盤として、RNAエディティングの変化をより高精度に決定していくことが可能になるため、今年度の研究成果は重要なものになると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はまずクレードBの環境ストレス下でのトランスクリプトームの変化を調べる予定であった。しかしながらこれまでに得られたゲノム及びトランスクリプトーム配列の整備とその結果を論文としてまとめる部分に多くの時間を費やした。そのため実験及びシーケンス解析の方は、予定よりやや遅れぎみである。しかしながら、論文として報告する上で行った解析により、今後の解析の基盤となる高精度のオルガネラゲノム配列を決定することができた。また新しいin silicoでの解析手法を修得した。これによりやや遅れている実験とそのデータ解析に関しては、平成26年度中に挽回できると考えている。また褐虫藻クレードAとクレードCのゲノム概要配列の決定を行うのに予定より多くの時間を要したことも、遅れてしまった理由の一つである。これらのデータもまた比較解析を行うことによりオルガネラゲノムの環境変化に伴う調節機構を明らかにしていく上で、有用なものになると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
連携研究者の協力を得て行う予定の野外のサンゴAcropora digitiferaに共生している褐虫藻のオルガネラゲノムの多型のパターンの解析に関しては、他の研究者にも協力をおねがいすることを検討する。これは、同じ研究機関に所属していた連携研究者の仕事の分野が変わったため、今後も同様の協力を得ることが難しくなることが予想されるためである。 また紫外線ストレス実験に関しては、クレードA、B、Cの各々で紫外線吸収物質の合成能が異なっていることを考慮していく予定である。このため、紫外線ストレス下における紫外線吸収物質の合成量を測定していくことを検討している。これにより、オルガネラゲノムの機能調節機構と紫外線吸収物質の合成量の変化との関係を調べることが可能になる。紫外線吸収物質をたくさん合成する褐虫藻は、それにより紫外線ストレスを軽減しているかもしれない。そのような褐虫藻のオルガネラゲノムの機能調節は抑えられるのかを検討する。 ここ1年の間に、他の研究グループにより同様のストレス実験下でどのような遺伝子の発現が変化するのかという報告がなされてきている。そのような論文の結果を考慮しつつ、本研究における解析結果を理解していく。
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Research Products
(1 results)