2013 Fiscal Year Research-status Report
一部のシアノバクテリアにおける澱粉性貯蔵多糖の生産メカニズム
Project/Area Number |
25440193
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
鈴木 英治 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (60211984)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 貯蔵多糖 / 澱粉 / アミロペクチン / グリコーゲン / シアノバクテリア / Cyanothece / 進化 |
Research Abstract |
シアノバクテリアの多くは貯蔵多糖としてグリコーゲンを蓄積する。ところがごく一部の種では、植物の澱粉成分であるアミロペクチンと類似した不溶性の分岐多糖を生産することが明らかになった。各種シアノバクテリアのゲノム配列を比較すると、グリコーゲン産生型のシアノバクテリアには枝作り酵素(α-1,6-結合形成酵素)が唯一つしか存在しないのに対し、これまでに見出されたアミロペクチン産生株にはいずれも酵素遺伝子が3種存在することが分かった。近年、アミロペクチン産生株と近縁のシアノテーセ(Cyanothece)5種のゲノム配列が報告され、そのうち4種については枝作り酵素を2つ持つことが明らかとなった。そこでこれら PCC 7424、PCC 7822、PCC 8801、PCC 8802 について、貯蔵多糖の分子形態を解析した。 貯蔵多糖の鎖長分布パターンから、PCC 7424、PCC 7822 株はグリコーゲン、PCC 8801、PCC 8802 株はアミロペクチン型の多糖を生産することが見出された。PCC 7424 の精製貯蔵多糖は、分子サイズがウサギ肝臓由来のグリコーゲンと同等であった。PCC 8802 の貯蔵多糖は、アミロペクチンと同等でグリコーゲンよりも大きな分子サイズであり、グリコーゲンにはない糊化特性、A形の結晶性など特異な性質が見られた。活性染色法により、PCC 7424 では2者の枝作り酵素のうち一方(1型)のみが高レベルで発現していること、PCC 8802 では2者の酵素が同等なレベルで発現していることが明らかとなった。従ってアミロペクチン型多糖の生産には、複数の枝作り酵素が適正なバランスで発現していることが必要であると考えられた。 Cyanobacterium NBRC 102756、Cyanobacterium CLg1 株のゲノム配列を解析し、ドラフト情報を取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部のシアノバクテリアは、アミロペクチンに類似した貯蔵多糖生産能力を持つ点で極めて特異である。本研究では多糖代謝酵素の中でも特に枝作り酵素遺伝子の数に着目し、貯蔵多糖の分子形態との間に相関性が認められるか検証を行った。平成25年度は新規に見出された、枝作り酵素遺伝子を2つ持つ、いわば「中間型」の4種に焦点を当てて解析を行い、これらの種間で貯蔵多糖形態に差異がある(アミロペクチン型とグリコーゲン型の2株ずつに分かれる)ことを見出した。またアイソザイム間の活性バランスに踏み込んで、詳細な知見を得ることができた。これらの成果は国際的な学術誌に公表する予定である。 澱粉生産性シアノバクテリアである Cyanobacterium sp. CLg1 株を用いて、共同研究相手であるコレオーニグループは、澱粉代謝に関わる変異株を多数単離している。本株のドラフトゲノム配列は、変異遺伝子を同定する上で決定的に重要な情報となった。その成果の一部は Plant Cell 誌に発表した。 以上のことから、研究目的にかなった成果が順調に得られていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
澱粉生産性シアノバクテリアを含む Cyanothece、Cyanobacterium 属の多くは相同的組換え能を示さず、遺伝子改変技術を容易に適用することができない。唯一、形質転換実験例が報告されている PCC 7822 株(Min and Sherman 2011)は本研究での解析の結果、グリコーゲン産生型であることが明らかとなった。以上の状況を踏まえ、Cyanothece などとは比較的に近縁種であり、モデルシアノバクテリアとして頻用される Synechocystis PCC 6803 株を宿主として澱粉代謝系の再構築を目指し、遺伝子導入と、形質転換株の特性解析を行う。より具体的には、Cyanothece ATCC 51142 株由来の枝作り酵素遺伝子3種、および澱粉生合成に重要であると報告された Cyanobacterium CLg1 株由来の枝切り酵素遺伝子(glgX2)を PCC 6803 株に導入、発現させ、形質転換株における各遺伝子産物(酵素)の活性、貯蔵多糖の構造、物性を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
貯蔵多糖の分子形態を明らかにする上で、Cyanothece sp. PCC 7822 株の培養および貯蔵多糖の調製ならびに解析については、他の株において有効な方法が容易には適用できないことが明らかとなり、条件検討に時間を費やした。 平成25年度内に上記 PCC 7822 株の培養条件、貯蔵多糖調製法、ならびに解析法の至適化を達成することができた。得られた知見に基づき、詳細な貯蔵多糖分子構造の解析を次年度当初に実施する計画であり、解析に必要な消耗品(試薬)を購入予定である。
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] Convergent evolution of polysaccharide debranching defines a common mechanism for starch accumulation in cyanobacteria and plants2013
Author(s)
Cenci U, Chabi M, Ducatez M, Tirtiaux C, Nirmal-Raj J, Utsumi Y, Kobayashi D, Sasaki S, Suzuki E, Nakamura Y, Putaux J-L, Roussel X, Durand-Terrasson A, Bhattacharya D, Vercoutter-Edouart A-S, Maes E, Arias MC, Palcic M, Sim L, Ball SG, Colleoni C
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Journal Title
Plant Cell
Volume: 25
Pages: 3961-3975
DOI
Peer Reviewed
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