2015 Fiscal Year Research-status Report
土壌動物に関連する微生物生態系の解析と新規バイオリソースの開発
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25450119
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
飯田 敏也 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 専任研究員 (30321722)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 土壌動物 / 土壌細菌 / 細菌群集解析 / Oribatida |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、陸上生態系において多様な有機物の分解と元素循環の役割を担う土壌の表層に棲息する土壌動物と土壌細菌の関連性に着目し、それらの未知の相互作用(共生)の発見を目指すと共に、土壌動物やそれらの排泄物を分離源とした細菌の分離培養を試み、新規な微生物バイオリソースの開発を目指すものである。 本年度はササラダニの一種について、サンプル採取、動物種推定のための遺伝子解析、微生物群集解析及び分離培養を試みた。茨城県つくば市内で採取した各種サンプルを実体顕微鏡で観察し、スギ落葉層に高頻度で見出された茶褐色の大型のダニに着目した。実体顕微鏡下で動物個体をTEバッファー中に採取し、スクイーザー粉砕及びガラスビーズ破砕後カラム処理し、精製DNAを得た。動物種推定のため真核生物の大サブユニットrRNA遺伝子の一部等のPCR増幅産物の塩基配列を解析し、これらがTrhypochthonius属 (Acari: Oribatida: Trhypochthoniidae) の一種であると推定した。各種検討の結果、原核生物のrRNA遺伝子の良好な増幅にはダニ10頭程度が必要であることが確認されたため、実体顕微鏡下同型種と推定されたダニ10頭由来のDNA溶液を鋳型として細菌・アーキアの16S rRNA遺伝子V4領域を増幅し、GS Juniorにて解析した。QIIMEによる一連の解析から、得られたおよそ2300リードが212のOTUにクラスタリングされた。主要な細菌群としてProteobacteria門が57.4%、Actinobacteria門が21.5%、Deinococcus-Thermus門が10.6%、Bacteroidetes門が7.8%、Acidobacteria門が2.2%であった。このうちDeinoccus-Thermus門の配列はほぼ全てが同一であり、当該動物種との共生関係が示唆された。また群集解析に供した細胞破砕液から細菌の分離培養を試みたが、群集解析に必要なDNA量の確保のため十分量の粉砕液を分離培養の条件検討に用いることができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
腐植食性土壌動物であるササラダニの一種を効率良く採取する方法を確立し、それらの細菌群集解析を実施した。本研究では、同一の動物破砕液から微生物群集解析と分離培養解析を同時に実施することを目指していたが、ダニ1頭に由来するDNAサンプルからの原核生物遺伝子のPCR増幅は十分でなく、それに伴い分離培養条件の検討に適した量の動物粉砕液の確保が困難であった。動物の粉砕とDNA調製等の手順を見直し、必要に応じて群集解析の結果から分離培養条件を検討するなどの実験手順の効率化を図る必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に見出したササラダニの一種をモデルとして、少量の動物粉砕液から細菌群集解析と分離培養解析を同時に実施可能な実験手順の確立を目指す。また、細菌群集解析の結果から分離培養の条件検討を試み、土壌動物に関連した新規なバイオリソースの取得を目指す。より多様な土壌動物、特に腐植食性のササラダニをターゲットとして、核rRNA遺伝子解析や細菌群集解析を試みる。
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Causes of Carryover |
平成27年度は高速シーケンサーGS Juniorによる細菌群集解析を複数回実施する予定で予算を組んでいたが、サンプルの採取とDNA調製に難航して予定通り実施できず、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度にサンプル採取とDNA調製の実験条件検討を進めて、高速シーケンサーによる群集解析を複数回実施する。未使用額はその経費に充てることとしたい。
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