2016 Fiscal Year Research-status Report
土壌動物に関連する微生物生態系の解析と新規バイオリソースの開発
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25450119
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
飯田 敏也 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 専任研究員 (30321722)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 土壌動物 / 土壌細菌 / 細菌群集解析 / ササラダニ |
Outline of Annual Research Achievements |
化学研究所筑波事業所構内にて採取したササラダニについて、動物種の推定と細菌群集解析を試みた。ツルグレン装置において繰り返し採取された5種のササラダニ個体について、実体顕微鏡下で採取した生きた1個体を70%エタノール中に浮遊洗浄後風乾し、-20度で一晩以上静置した。ジルコニアビーズ及びTEバッファーを添加したチューブに動物個体を入れ、粉砕破砕装置(FastPrep-24)にて粉砕処理した。破砕液上清をスピンカラム(MonoFas DNA精製キットI)にて精製・濃縮したものをPCRの鋳型DNAとして解析に用いた。動物種推定のため18S rRNA及びCOIの各遺伝子の一部をPCR増幅して塩基配列を解析した結果、5種をそれぞれモンツキダニ科(Trhypochthoniidae)、二種のアミメオニダニ科(Nothridae)、エンマダニ科(Phenopelopidae)、ヘソイレコダニ科(Euphthiracaridae)のササラダニと推定した。うち三種(モンツキダニ科、アミメオニダニ科、エンマダニ科)について、1個体に由来するDNA検体を複数調製し、細菌の16S rRNA遺伝子のV1V2領域を増幅するプライマーでPCRし、MiSeqのアンプリコンシーケンス解析用のサンプルを調製した。得られた58万リードの配列データは、Qiimeにて97%相同性のクラスタリング条件で解析した。Chao1等による細菌配列の多様性は、アミメオニダニ科個体が高く、エンマダニ科個体は低い傾向が見られた。綱レベルの主要な構成細菌群として、三種ともAlphaproteobacteria及びActinobacteriaが上位を占めたが、これらを構成するOTUは動物種ごとに異なっていた。また、OTUレベルでは個体間のばらつきが大きなものが見られ、サンプリング環境や食物に由来する可能性が考えられた。今後配列データ分析を進め、各ササラダニ種に特徴的なOTUを見出すことにより、ササラダニと細菌の未知の関連性の解明を目指す。また、ササラダニ個体から細菌の分離培養を試み、細菌群集解析データとの関連性を探る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ダニ1個体に由来するDNAサンプルの調製方法の検討に時間を要した。特に、単一個体に由来する細胞破砕液において、分離培養のシードに用いるとともに群集解析用のDNA溶液としても適用可能なサンプル調製条件を様々検討してきたが、良い条件を見出すことができなかったため、PCR解析条件に限定して適用可能なサンプル調製条件をとりあえず確立するに至った。この条件で細菌群集解析を実施して良好な配列データを得ることができたため、本年度は本条件を他のササラダニにも適用し、細菌群集解析データの取得と解析を目指す。しかし、ジルコニアビーズによる物理的な粉砕を伴って調製された破砕上清サンプルは細菌の分離培養のシードには適さないと考えられるため、この目的のために更なるサンプル調製の条件検討が今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに確立したササラダニ1個体に由来するアンプリコンシーケンス解析の条件を用いて、昨年度実施したササラダニ個体細菌群集解析結果の再確認に加えて、より多様なササラダニ個体の細菌群集解析を試みる。同時に、細菌の分離培養のシードとなりうる動物破砕液の調製条件の検討を行い、群集解析データと同時に細菌の分離培養を試みる。
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Causes of Carryover |
アンプリコンシーケンス解析に供するササラダニ1個体に由来するDNA検体調製の条件検討が難航し、次世代シーケンス解析の実施が予定回数より少なくなった事から、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度にアンプリコンシーケンス解析を複数回実施する予定である。未使用額は、主にその経費に充当する。
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