2015 Fiscal Year Annual Research Report
流域圏における近代農山村遺産の再評価-那珂川流域、多摩川流域を事例に-
Project/Area Number |
25450203
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
山本 美穂 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10312399)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 俊守 宇都宮大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20396815)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 近代史 / 流域圏 / 多摩川 / 那珂川 / 明治期統計 / 木造古民家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1)自然立地上に展開した農林業および水運、伝統的木造建築物の再評価を通じて、2)土地固有の自然と人との関わりを記述し、流域という地域振興における基礎単位の重要性について提起することである。事例として、近世以来の流域開発が最も激しく進行し、人と自然のつながりが極めて希薄化した多摩川、逆に極めて緩やかに進み、江戸期水運の名残を農山村文化に留める那珂川の二つを対象とした。近代化以降見えにくくなった自然立地と開発のあり方、今後の国土計画と地域振興において重視すべき今日的課題を明らかにする研究である。具体的方法として、以下の3点を挙げて、それぞれに研究実績が加えられた。 1)近代化初期における流域圏域市町村の農林業構造の解明。多摩川流域、那珂川流域で近代化初期にどのような農林業が展開したか。明治期統計値の土地利用、農林業生産物、各産物の収量、農業戸数、人口等について統計解析を加え、地域的特色、地形など自然条件、市場距離など社会条件などについて、日本が資本主義社会へ突入する前の自然立地的な農林業の姿を流域レベルで明らかにした。 2)流域圏における100年間の各指標の比較分析。同一エリアにおける統計値および文献を用いて上記と比較検討し、近代化以降約100年間の流域圏の変貌と共通点を明らかにした。 3)地域遺産の特定および保全・継承への課題。対象流域内特に那珂川流域における伝統的木造建築物のうち、多くは築100年以上の建造物であり農村史上の意義が大きい木造長屋門を対象としその存在形態を明らかにする。100年来の民有地域遺産の保全・継承の現状が広域的に明らかとなった。 総じて、単なる事例研究の域にとどまらず、具体的な時間軸と空間軸の中に事例を位置づけて評価する歴史地理学的視点を通して、近世を射程に入れた地域研究の課題と重要性がより明確となった。
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Research Products
(7 results)