2015 Fiscal Year Annual Research Report
過去の植生改変は、現在のニホンザル個体群を不安定にしているか?
Project/Area Number |
25450210
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉浦 秀樹 京都大学, 野生動物研究センター, 准教授 (80314243)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ニホンザル / 密度 / 人為的攪乱 / 一次林 / 二次林 / ニホンジカ / 屋久島 |
Outline of Annual Research Achievements |
屋久島・西部地域は世界遺産に登録され、一般には原生の自然が残っていると思われている。しかし100~40年前には人間が盛んに利用しており、その影響は今も散見される。過去の人為的な植生の改変は、今も、ここに住むニホンザル個体群を不安定にしている可能性がある。特に、人為的な改変の大きかった低地海岸林の中央部でサルが増えていることが分かってきた。増えたサルは周辺部にあふれ出し、移動した先で、徐々に死んでいる可能性がある。この仮説を検証し、過去の人為的な環境改変が、現在の野生ニホンザルに与えている影響を明らかにすることを目的に、以下の2つを行った。 (1) 7-8月に現地での個体数調査を実施し、低地海岸林の中部と北部のニホンザルの頭数、出生数を把握した。南部についても、2013年から調査を開始した1群を含む3群の頭数、出生数の調査を継続した。2014年度と同様、北部のいくつかの群れで、頭数の減少が観察された。また、北部のいくつかの群れで、行動域が周辺部へ移動したと考えられた。2年連続で同じ傾向が確認されたことから、安定して起きている現象と言える。 (2) 人為的な植生改変の影響を明らかにするために、人為的な改変のない、中標高域での密度調査を開始した。一次林と考えられる標高約400-600mの中標高域に、20台の自動撮影カメラを設置し、中大型哺乳類の撮影を行った。ニホンザルは、一次林の1箇所では、二次林に比べて密度が大きく減少したものの、一次林の1箇所では、二次林よりもやや密度が高いという結果を得た。ニホンジカは、一次林の2箇所共で、二次林に比べて密度が大きく減少した。 ニホンジカの密度は人為的な攪乱のあった地域で高密度化していると考えられる。一方、ニホンザルでは、森林の下層植生への依存が低いため、一次林もよい生息地となっている可能性がある。
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