2015 Fiscal Year Annual Research Report
平成23年新燃岳噴火被害後の植生再生における偏向遷移の可能性
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25450230
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
山川 博美 国立研究開発法人 森林総合研究所, 九州支所, 主任研究員 (00582751)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 哲人 国立研究開発法人 森林総合研究所, 九州支所, 主任研究員 (00353558)
金谷 整一 国立研究開発法人 森林総合研究所, 九州支所, 主任研究員 (90353648)
重永 英年 国立研究開発法人 森林総合研究所, 九州支所, グループ長 (00353714)
野宮 治人 国立研究開発法人 森林総合研究所, 九州支所, 主任研究員 (30353808)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 火山噴火 / 植生遷移 / シカ食害 / アカマツ / 植生構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
噴火被害及びシカ食害の影響を広域で把握するため、霧島山系全域において約35年前に実施された調査資料と照らし合わせながら190点の植生調査を行った。平成23年の新燃岳噴火による植生被害は火口周辺に限定されており、植生被害の範囲は噴火時の降灰方向と対応していた。火口周辺の強被害エリアでは火山灰および礫に覆われ完全に植生が消失していた。一方、噴火による被害が中程度のエリアでは、アカマツのみが枯死し、混交するコハウチワカエデやミズナラなどの広葉樹は生き残っていた。また、霧島を代表する低木性木本種であるミヤマキリシマは枝先が枯れるなどの被害がみられた。霧島山系全体では、シカの採食による植生変化が顕著に観察され、下層植生は植被率が減少していた。特に、高標高域ではスズタケが、低標高域ではアオキが減少していた。一方で、タンナサワフタギ、ハイノキ、ツクシコウモリおよびキリシマアザミなどのシカの不嗜好性植物の被度が高くなっていた。新燃岳火口から南東約3kmに位置する高千穂河原においては、既設の5つの固定プロットにおいて、胸高直径5cm以上の樹木について噴火後5年目のモニタリング調査を行った。噴火によって被害を受けたアカマツおよびネジキが衰退し、その他の落葉広葉樹は多くの個体で樹勢が回復していた。また、噴火前と噴火5年後の種の優占順位を比較すると、各樹種の噴火によるダメージの受け方のおよび各プロットにおける噴火の被害程度の違いによって、各プロットによって種の優占順位の変化が異なった。したがって、この噴火の被害強度の違いが景観的な植生構造の多様性を高めていると考えられた。
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