2013 Fiscal Year Research-status Report
マガキで発見された新規抗酸化物質による肝臓保護作用に関する研究
Project/Area Number |
25450297
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
布田 博敏 北海道大学, 大学院保健科学研究院, 特任准教授 (60576172)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平松 尚志 北海道大学, 大学院水産科学研究院, 准教授 (10443920)
神 繁樹 北海道大学, 大学院保健科学研究院, 助教 (60531845)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 抗酸化物質 / マガキ / NASHモデルマウス / 肝臓 / 培養細胞 / 肝庇護 / 酸化 / 予防 |
Research Abstract |
1.解析技術の確立(1)ALT、AST活性の微量測定系の開発―肝臓の培養細胞を用いてマガキ由来の抗酸化物質(DHMBA)の細胞毒性を観察するためには、細胞が死滅した時に培養液中に放出されるところの肝臓特異的に発現する「ALT、AST活性」を測定する必要がある。両活性とも市販の測定キット(Wako)のプロトコールを一部変更することにより両活性の微量測定が可能となった。(2)DHMBAの細胞毒性―細胞毒性測定に際し、化学構造がDHMBAと似ている人工の抗酸化物であるジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を対象群として用いた。BHTが高濃度で細胞毒性を示しているのに対し、DHMBAは0.5mMまでまったく細胞毒性を示さず、むしろ増加傾向にあった。これらの結果は、動物を用いた毒性試験の結果を待たなければならないが、DHMBAは肝臓病予防のサプルメントや肝臓庇護薬として有望であると考えられた。(3)線維化遺伝子の測定系の確立―Real-time PCR法による線維化遺伝子(COL1a2, COL3, COL4)の定量系を確立し、NASHモデルマウスを使ったDHMBAの肝臓保護作用を観察することが可能となった。 2.実験試料の調整(1)DHMBAの化学的合成法の確立―肝臓の細胞培養実験に用いるDHMBAは市販のメチルガレートから2 stepで化学合成に成功した。(2)「DHMBA粗精製物」の精製法の確立―肝臓の疾病モデルマウスの餌料に添加する「DHMBA粗精製物」はマガキの抽出液を70%エタノール沈殿し、その上清をエバポレーターにより、容量が50%になるまで濃縮を行った。その後、大型凍結乾燥機を用いて、3日間、凍結乾燥を行った。1Lの抽出物から5gのDHMBAの粗精製物が得られた。これらを用いて肝培養細胞やNASHモデルマウスを使ったDHMBAの肝臓保護作用を観察することが可能となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.肝臓の培養細胞を用いてDHMBAの細胞毒性を観察するために培養液中の「ALT、AST活性」の微量測定をする必要がある。当初これらの酵素活性は微量であることからELISA (enzyme-linked immunoassay)によるタンパク量の測定を試みようとしていたが、両活性とも市販の測定キット(Wako)のプロトコールを一部変更することにより測定可能となった為、実験計画を前倒しし、平成26年度に予定していた肝臓の培養細胞を用いたDHMBAの抗アポトーシス効果における予備実験を行うことができたため。 2.当初、「DHMBA粗精製物」の精製法において、実験室の凍結乾燥機を用いた場合、試料の凍結乾燥に長時間を要したが、北海道立総合研究機構 食品加工研究センターの大型凍結乾燥機を用いることにより、短時間にかつ多量に凍結乾燥を行うことができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.肝臓の培養細胞を用いたDHMBAの毒性試験- 前年度に測定法を確立した「培養液中のALT、AST活性の微量測定法」と、毒性試験で一般的に用いられている「Cell Counting Kit-8法」を用いてDHMBAの細胞毒性を測定したところ、高濃度(0.5mM)でも肝臓の培養細胞に対して毒性を示さず、僅かながら細胞数の増加が見られる等、良好な結果が得られた。この結果を基に、対象群として、化粧品や食品に添加されている既存の抗酸化物質(BHT、ビタミンC、ビタミンE、カテキン、クロロゲン酸)や多価不飽和脂肪酸(EPA やDHA)を用いて比較検討を行い、DHMBAにおける毒性試験の総合的な解析を行う。 2.NASHモデルマウスを用いたDHMBAによる肝臓線維化の観察- NASHモデルマウスにおいて慢性肝炎から肝硬変への病態進行に伴い、肝臓の線維化が進展する。前年度に測定が可能となった線維化マーカーの発現量の測定、及び線維化染色(マッソントリクローム染色)を施した肝臓組織の観察を行い、DHMBAによるNASHモデルマウスの肝臓への病態進行状況に関し、総合的な解析を行う。 3.肝臓の培養細胞を用いたDHMBAによる抗アポトーシス効果の観察- NASHのような活性酸素種が要因となって発生する炎症性の肝疾患において、アポトーシスによる肝細胞の細胞死が報告されている。また抗酸化物質であるモリンやエグラ酸による抗アポトーシス効果も報告されており、肝臓の培養細胞を用いてDHMBAによる抗アポトーシス効果を観察する。前年の予備実験において、酸化剤であるAAPHを用いて肝臓の培養細胞にアポトーシスを誘導することに成功しており、アポトーシスの特徴である「DNAのフラグメンテーション化」や「細胞表面へのフォスファチジルセリンの露出」を指標に、DHMBAの抗アポトーシス効果に関し、総合的に解析を行う。
|
Research Products
(6 results)