2014 Fiscal Year Research-status Report
食料需要の構造的解明と家計・農業の連携による食料自給率の改善方策
Project/Area Number |
25450322
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
草苅 仁 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40312863)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 食料需要 / 家計 / 農業 / 連携 / 食料自給率 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の農業は高コスト体質を抜け出せないままである。国産農産物に対する需要喚起策も,依然として,いわゆる「国産プレミアム」としての品質格差に期待した輸入農産物との差別化を基本としている。そのため,日本は国内農業保護のコストを農産物価格に上乗せする形で家計に転嫁してきた。しかし、高度成長期以降の半世紀の間に日本の家計は小型化(世帯規模が縮小)し,調理技術も低下したため食事の外部依存度が高くなった。それは,家計が国内農業保護のコストを負担する余地が縮小したことを意味する。日本の食料自給率が継続的に低下してきた背景には,家計の変貌と,家計の変貌をもたらした経済状況の変化がある。上記の観点から食料需要構造の全貌と今後の見通しを解明し,開放経済下で家計と国内農業が連携するための方策を提言することが本研究の目的である。 そのため,研究初年度である前年度において,「日本経済の変動に対する調整として家計が変貌し,その結果,日本の食料消費は構造的に変化した」という仮説の意味を確認し,現実の変化が従来の需要分析では捉えきれない,より動的な因果関係に規定されている事実を明らかにした。平成26年度は前年度の成果をふまえて,主に以下の3点を実施した。 ①戦後から今日に至る日本人の食生活を,(a)洋風化が進展した1950年代以降の高度成長期,(b)外部化が進展した1970年代後半以降の安定成長期,(c)家計所得の世代間格差が拡大した1990年代前半以降の3期に分けて実証分析を実施した結果,仮説の因果関係が支持された。 ②食品産業(外食を含む)の食材需要について,産業連関分析で食品産業の国産農産物と輸入農産物に対する派生需要を推計した。 ③①と②の成果のうち,①の(c)に示す格差の拡大が,世代間の食生活の二極化をもたらし,最近の年齢階級別横断面データではエンゲルの法則が成立しないことを実証して,学会で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」には,平成26年度の研究実施計画として,前年度に検討した研究枠組みと実証方法の開発をふまえて,実証分析を実施する予定であることを明記している。 そのため,「日本経済の変動に対する調整として家計が変貌し,その結果,日本の食料消費は構造的に変化した」という仮説を,「研究実績の概要」の①~③に記載したとおりに実証した。ただし,このうち②に示した産業連関分析については,総務省『産業連関表』の最新データである平成23年確定値,ならびに「基本分類表」が平成27年6月に公表予定であるため,現状では平成17年の推計まで終了している。最新の「基本分類表」が公表され次第,平成23年の推計を実施する予定であるため,自己点検において「やや遅れている」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず,平成27年6月公表予定の総務省『産業連関表』平成23年「基本分類表」が使用可能となった時点で,平成26年度の研究実施計画の積み残し分である②食品産業の産業連関分析を実施して,すでに推計済みである平成7~17年に23年を加え,国産農産物と輸入農産物に対する派生需要の推計を完成させる予定である。以上により「研究実績の概要」に示した①~③がすべて終了し,そこから食料需要構造の全貌と今後の見通しを把握する。 その上で,平成27年度は最終年度であるため,これまでの成果をふまえて,開放経済化で家計と国内農業が連携する(家計が国産農産物を持続的に需要する)ための方策を考察する。開放経済化において,家計と国内農業の双方にインセンティブをもたらす連携のあり方を検討して,具体的に提言する予定である。
|
Research Products
(1 results)