2013 Fiscal Year Research-status Report
不耕起栽培や堆肥施用による環境保全型農業の物質循環評価および流域物質動態解析
Project/Area Number |
25450354
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
大澤 和敏 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (30376941)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 土壌環境保全 / 土壌侵食 / 窒素循環 / 炭素循環 / 不耕起栽培 / 堆肥 |
Research Abstract |
平成25年度は,沖縄県におけるサトウキビ圃場を対象地とした土壌侵食と窒素流亡に関する現地試験を主に行った。設置した4つの試験区は夏植え栽培・化学肥料施用区(夏化区),夏植え栽培・堆肥施用区(夏堆区),株出し栽培・化学肥料施用区(株化区),株出し栽培・堆肥施用区(株堆区)とした。なお,夏植え栽培は慣行耕起法,株出し栽培は不耕起栽培法である。各試験区で水位,濁度の連続観測,降雨時に表流水および浸透水の採水を行い,土壌や窒素の流亡量などを算出した。 表面流発生時の土砂流出量は,夏堆区の方が著しく大きく,総量で株堆区と比較して約36倍大きかった。表流水に含まれる窒素の流出をみると,硝酸態窒素成分の全窒素に占める割合は夏堆区で21%~79%,株堆区で5%~10%であった。また,夏堆区における全窒素の表流出量は株堆区より総量で約1.6倍大きく,夏堆区の硝酸態窒素の表流出量は株堆区より総量で約5.7倍大きかった。硝酸態窒素の浸透量は,夏堆区≧夏化区≫株化区>株堆区の順であり,株出し栽培区は夏植え栽培の20%程度であった。株出し栽培区が小さかった要因として,株出し栽培区がサトウキビの成長期であったために,窒素吸収が活発であったことが考えられる。また,夏植え栽培区は作物被覆が小さかったため地温が高く,堆肥等の有機物の分解が促進され,無機化が活発だったことも予想される。窒素浸透量と窒素表流量の全窒素を比較すると,夏堆区では窒素浸透量は窒素表流量の約5.8倍,株堆区では約1.4倍であり,硝酸態窒素を比較すると,夏堆区では約21.7倍,株堆区では約17.8倍であり,浸透による窒素流亡が顕著であった。全窒素の浸透量の窒素投入量(施肥量)に対する割合は,夏化区23%,夏堆区11%,株化区5%,株堆区1%であった。以上の結果より,土壌侵食抑制や窒素保持には不耕起栽培と堆肥投入が有効であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度にあたる平成25年度では,当初の計画の通りにほぼ遂行できた。特に,試験圃場における土壌侵食および窒素動態に関する現地観測を実施し,土壌や窒素の流出状況を耕起方法や肥培管理方法の観点から評価できた点は,本研究課題を遂行する上での貴重なデータが得られたと自己評価できる。また、土壌有機炭素の流亡・放出に関する圃場スケールの現地観測,流域スケールの現地観測,そしてモデルを用いた解析は,本研究の開始前より実施しており,ある程度の成果が既に得られている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は,以下の4つの具体的目標のもとで遂行される計画にある。(a)土壌・栄養塩・有機炭素の流亡と土壌中の栄養塩・有機炭素含有量の関係の評価,(b)流域における 土砂・栄養塩・炭素動態の算定,(c)圃場スケールおよび流域スケールの土砂・栄養塩・炭素動態モデルの開発,(d)流域における積極的な負荷流出の低減および炭素隔離のための営農シナリオ解析 平成25年度までに,(a)および(b),(c)の一部が遂行できている。今後,残りの目標について順次進める方針にある。また,平成26年度より,研究分担者に加入した松井宏之教授には、本研究課題における水田での物質動態に関する調査、実験、解析を担当する計画にある。当該分担者は、これまで水田における水、土砂、栄養塩動態に関する研究実績が十分にあり、本研究課題では予定していなかった水田における物質動態の機構について、新たな知見が得られることを見込んでいる。研究代表者は、畑地における物質動態について、現地調査や数値シミュレーションを用いて検討している状況にあるが、流域スケールでの動態を検討する上で、水田のコンポーネントが必要不可欠となる。当初の計画では、水田の物質動態の機構は既存の研究成果を利用する予定にあったが、予想以上に水田における物質動態の機構は複雑で、研究分担者を加えその機構を解明していく必要が生じた。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額として,10,442円繰り越すことになったが,消耗品の支出が計画より安く済んだことによる。 繰越額の10,442円の使途として、試料の室内分析に用いる濾紙やガラス器具等の消耗品の購入に充てる。
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