2014 Fiscal Year Research-status Report
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25450368
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
本條 毅 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (60173655)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 熱伝達係数 / ヒートアイランド緩和 / クールアイランド / 植物三次元形状 / 個葉 |
Outline of Annual Research Achievements |
都市の緑は蒸発散により都市を冷やすと考えられているが,さまざまな測定結果から,緑地が冷えるのは,蒸発散の効果だけでは必ずしも説明出来ない場合がある。その原因には,小さい葉の集合体である植物と大気との顕熱交換が大きく気温に近い温度になるため,見かけ上冷却されているように見えることが考えられる。従来,熱収支を考えるとき,空中にある葉群の構造や分布と顕熱交換との関係などは,あまり扱われていなかった。そこで,本研究では,葉の集合体としての樹木と大気との熱交換の特性や,葉のスケールや三次元構造が熱収支に及ぼす影響の解明をその目的とした。 本年度は,植物の立体形状モデルの作成,リモートセンシング熱画像データの解析とともに,昨年度と同様個葉の熱伝達係数を実験により求めた。植物の立体形状モデルの作成では,シミュレーションに用いる樹木三次元データを作成した。リモートセンシング熱画像データの解析では,地表面と樹冠の昼夜の表面温度差と,樹木の大きさの関係を求めた。このデータは今後,シミュレーションの検証に用いる。葉の熱伝達係数を求める実験では,今回も潜熱輸送量の異なる2個体を用いて,熱収支式を連立して解く方法を用いた。実験結果を昨年と比較できるように,実験に用いた樹種は,アオキ,ヤブツバキ,イヌツゲの3種とした。葉面積は,アオキ>ヤブツバキ>イヌツゲの順で小さく,熱伝達係数の平均値の結果は,アオキが<イヌツゲ<ヤブツバキであった。必ずしも葉面積が大きいほど,熱伝達係数小さくなる傾向は見られなかった。異なる種の葉を実験に用いたため気孔の構造,数や葉の表面特性が異なるため,単純に葉の大きさが熱伝達係数に影響しなかったためと考えられる。以上のようなモデル化,測定結果により,個葉の集合としての樹木の熱伝達解析について,重要な知見が得られたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,葉の集合体としての樹木と大気の熱交換がどの程度かを定量的に示し,これまでの気象,工学的な理論では扱われてこなかった,空中にある葉群の構造や分布と顕熱交換係数との関係などについて解析することである。また,葉の集合体と大気との熱交換の特性や,葉のスケールや三次元構造の影響についてモデル化し,樹木の集合体である緑地を都市の微気象制御に応用するための基礎的知見を得ることも目標である。本年度は,植物の葉の三次元的密度分布データを作成し,検証データの一部として,リモートセンシング熱画像データから,地表面と樹冠の昼夜の表面温度差分布を求めた。また熱伝達係数の測定では,前年度の測定データを積み重ねることができた。これらにより,植物と大気間で,顕熱交換メカニズムの概要が把握できた。また,葉の集合体である樹木の顕熱交換シミュレーションモデルについても基本的なデータを得ることができた。以上より,葉の集合体としての樹木と大気との熱交換の特性解明や,葉のスケールや三次元構造が熱収支に及ぼす影響の解明などの最終的な目標に向かっての準備が順調に進んだといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は作成した植物の葉の三次元的密度分布データを使用し,葉の熱伝達係数の測定値をもとに,樹木全体の熱交換モデルを作成し,三次元的な温度分布や,樹木全体としての熱交換のシミュレーションを行う予定である。リモートセンシング熱画像データから得られた,地表面と樹冠の昼夜の表面温度差分布からは,大域的,限定的な情報しか得られないが,検証データとして使用することを試みる。また,葉の集合体である個体についても,個葉の場合と同じ手法を用いて熱伝達係数の測定を行ない検証データとする。葉の空間的な分布が熱伝達係数にどのような影響を及ぼすかについては,シミュレーションモデルの葉の大きさ,葉の角度,密度などを変化させて分析する。以上より,葉の集合体としての樹木と大気との熱交換の特性解明や,葉のスケールや三次元構造が熱収支に及ぼす影響の解明を行う。
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Research Products
(2 results)