2014 Fiscal Year Research-status Report
「細胞内発現する人工小型抗体」封入ナノ粒子の血中投与による狂犬病治療法の開発
Project/Area Number |
25450439
|
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
加来 義浩 国立感染症研究所, その他部局等, 研究員 (70392321)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 狂犬病 / 遺伝子治療 / scFv / intrabody / ドラッグデリバリー / 血液脳関門 |
Outline of Annual Research Achievements |
狂犬病は、狂犬病ウイルス(Rabies virus: RABV)を原因とする人獣共通感染症である。ひとたび発症すると確実な治療法はなく、致死率はほぼ100%である。本研究は、RABVに対する人工小型抗体をRABV感染細胞に導入して、RABVの増殖を阻害することにより、狂犬病の治療法への応用を目指している。H26年度には以下の2項目に関して研究を行った。 1)RABV蛋白質に対する複数種の小型抗体の作出および細胞内反応性の解析:初年度に作成したRABV-P, -N蛋白質に対する小型抗体(single chain variable fragment; scFv)のほかに、ファージディスプレイライブラリーTomlinson I+Jから、さらに複数種のscFv遺伝子を選択し、pCAGGSベクターにクローニングした。同ベクターを、マウス神経芽腫由来MNA細胞に導入したうえで、RABV CVS11株を接種したところ、複数のクローンについて細胞内で標的蛋白質と結合していることが示された。 2)抗RABV-PscFvのエピトープマッピング:RABV-Pの全アミノ酸配列に基づくペプチドセットを固着させたガラススライド上で、scFvを反応させ、マイクロアレイで検出することにより、RABV-Pとの結合部位を明らかにすることを目指している。現在、Linear epitopeを認識することが確認されている抗RABV-P scFv 4クローンについて、解析を進めている。 3)血液脳関門(BBB)透過性ペプチドを用いたin vitroデリバリー系の構築:RABV-G蛋白質由来のペプチド29残基(RVG29)を血中に投与すると、BBBを越えて広範囲の脳実質へ移行することが報告されており、すでに脳への薬剤デリバリーの研究に応用されている。これまでにRVG29のほかに、同様にBBB透過性が報告されているヘビ毒由来ペプチドKC2S、陰性対照ペプチドを作製した。現在、各ペプチドについて、抗RABV-G血清に対する反応性およびscFv発現ベクターとの結合性の解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究では上述の3項目に関して実施した。 「1)RABV蛋白質に対する複数種の小型抗体の作出および細胞内反応性の解析」のなかで、小型抗体の作出についてはRABV-P, -N蛋白質に対する複数のscFv遺伝子をクローニングできたことから、計画通りに進行したと考えている。細胞内反応性の解析については、複数のクローンについて、細胞内でのRABV-P蛋白質との結合性を確認できた。1クローンについてはRABVの増殖阻害効果を確認できており、今後さらに多くのクローンについて阻害効果の確認をすすめる。そのためには、scFv発現ベクターの細胞への導入効率の向上が課題となる。 「2)抗RABV-PscFvのエピトープマッピング」については、RABV-Pの全アミノ酸配列に基づくペプチドセットをスポットしたガラススライド上でscFvを反応させ、マイクロアレイ解析を行ったところ、複数の陽性スポットが確認できたことから、おおむね順調に進行していると考えている。一方、非特異反応と思われるスポットも複数出現したことから、ブロッキングや二次抗体等の条件を検討することにより、特異的に反応するスポットを確認することが今後の課題である。 「3)血液脳関門(BBB)透過性ペプチドを用いたin vitroデリバリー系の構築」については、ペプチド配列に合成が困難な配列が含まれていたことから、予想以上に合成に時間がかかったが、2種類のBBB透過性ペプチドおよび1種類の陰性対照ペプチドの合成は完了した。現在、各ペプチドについて抗RABV-G血清に対する反応性の有無を確認しており、scFv発現ベクターとペプチドの適切な混合比を決定したうえで、近日中にin vitroデリバリー系構築に向けた実験を開始できる予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
「RABV蛋白質に対する複数種の小型抗体の作出」については、新たなscFv遺伝子のクローニングを継続して進めているが、当初の目標は達成したと考えられる。標的蛋白質との細胞内における結合性は、一部のクローンにおいて確認できており、さらに他のクローンについても詳細に解析を進める。また、RABV増殖阻害効果を検証するため、scFv発現細胞/非発現細胞にRABVを接種後、ウイルスmRNAの発現量を継時的に測定し、比較する。 「抗RABV-PscFvのエピトープマッピング」については、上述のRABV-Pの全アミノ酸配列に基づくペプチドセットをスポットしたガラススライドを用いたマイクロアレイ解析において、ブロッキングや二次抗体等の条件を検討し、特異的に反応するスポットを確認し、エピトープの決定を目指す。 血液脳関門(BBB)透過性ペプチドを用いたin vitroデリバリー系の構築については、各ペプチドについて抗RABV-G血清に対する反応性の有無を確認した後、scFv発現ベクターとペプチドの適切な混合比を決定したうえで、マウス神経芽腫由来MNA細胞への導入に利用する。導入/発現効率を検討後、導入細胞にRABVを接種し、増殖阻害効果を検討する。In vitroでRABV増殖阻害効果が確認できたクローンを用いて、in vivoデリバリー系の構築を行う。ペプチド/scFv発現ベクター複合体をマウスの静脈内あるいは腹腔内に投与し、脳におけるscFv発現を解析することにより、脳へのデリバリー効率を確認する。脳へのデリバリーが確認できたクローンについては、scFv導入時にRABVを接種し、scFv導入/非導入マウス間で、発症効率を比較する。
|
Causes of Carryover |
本年度より、抗RABV小型抗体の反応機序の解明を目的として、エピトープマッピング用のマイクロアレイスライドを用いて、解析を進めている。これらのスライドはドイツのJPT社より購入し、解析は同社の解析委託サービスを利用している。解析は26年度中に開始したが、現在でも反応条件を変更した再解析が継続中であることから、支払金額が確定していない。このため、エピトープマッピングにかかる費用について、次年度に繰り越した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
抗RABV小型抗体の反応機序の解明を目的とした、エピトープマッピング用のマイクロアレイ解析費用として使用される。また、神経細胞特異的デリバリーに用いるBBB透過性ペプチドの追加購入費用にも使用される。
|