2013 Fiscal Year Research-status Report
微好気培養法による未知水生菌類の探索と培養株の収集・保存
Project/Area Number |
25450500
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
中桐 昭 鳥取大学, 農学部, 教授 (70198050)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 低酸素 / 微好気性真菌類 / 未知菌類 |
Research Abstract |
本研究は、水生菌類を微好気(低酸素)培養法を用いて探索し、これまで見逃されていた水界に生息する微好気性真菌類を分離培養して、水界における真菌類の多様性とその生態的役割を明らかにすること、および、その培養株を新たな生物資源として確立することを目的としている。その達成に向けて、平成25年度は、①自然界で真菌が生息するさまざまな基質中の酸素濃度、二酸化炭素濃度を実測、調査し、その環境に即した培養条件を設定すること、②様々な酸素濃度、二酸化炭素濃度の条件下で基質から出現する真菌類を分離すること、③通常の好気培養で分離される真菌類とは異なる菌種が多く分離される条件を見出し、微好気分離法を開発することを目指して研究を行った。その結果、溜池などの止水環境では、水深30㎝程度の水底に堆積した落葉リター内の溶存酸素(DO)が0-10%程度と、低酸素環境になっていることがわかり、その落葉リターを微好気性菌の分離源として実験に用いることとした。菌の分離法を検討した結果、まず前培養として、炭素源を抜いた液体培地中に落葉試料片を入れて、窒素ガスおよび酸素ガスをガス混合器を用いてその割合を調整して吹き込み、低酸素条件(DO=5-30%)、中酸素条件(DO=50-80%)、高酸素条件(DO=90-100%)の3条件で1週間培養した。次に、本培養として、落葉試料片を寒天培地上に置き、雰囲気を低酸素、中酸素、高酸素に調整したチャンバー内で培養を行い、出現した菌を分離した。分離菌の詳細な同定は進行中であるが、3つの培養条件で得られる菌類相には違いが見られた。特に、低酸素条件での分離株(18株)には、胞子を形成せず菌糸状態のものが多く出現する傾向があった。今後、開発した2段階分離法を異なる基質を用いて実施するとともに、分離株の同定、系統解析、性状調査を進めて、微好気生菌を特定して、その特性を明らかにしていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、初年度であるH25年度は、①水界の微好気環境の把握、および、②微好気分離培養法の確立と新規糸状菌類の分離を行うことを目標に研究を実施した。その結果、ため池など止水環境では、浅い水底の落葉リターなどでも低酸素環境が作り出されていることを明らかにした。また、このような水底の落葉を基質として、新たに開発した2段階培養法によって、微好気性菌の可能性がある菌株18株を分離することができた。以上のように、H25年度は、概ね計画通り実施できたと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
H26年度以降は、開発した2段階分離法を用いて、さまざまな水生環境から、基質も変えて、菌の分離を継続する。そして、分離菌株の同定とDNA塩基配列の基づく系統解析を行い、微好気生菌の分類学的所属と系統位置を解明していく。また、分離株を用いた培養実験によって、微好気性菌の特徴を明らかにするとともに、胞子形成や生活史の世代交代に及ぼす酸素条件などについて調査を行う。分離した微好気生菌は、遺伝資源として保存法の検討を行い、新たな遺伝資源として保存し、研究実施者が所属する菌類きのこ遺伝資源研究センターの菌株コレクションに寄託して、利用可能な遺伝資源とする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度は、直接経費として230万円の交付を受けたが、使用したのは103万円で、127万円ほどの残金となった。支出が計画より少なかった理由は、購入を予定していた酸素濃度計などの機器や混合ガスを別の経費で購入したものを利用できたこと、また、所属機関近辺の溜池などで繰り返し調査と試料の収集を行ったため、採集旅費の支出がなかったこと、加えて、水生菌の分離、観察に、倒立顕微鏡が必要であることが判明し、購入を検討したが、年度末近くであったため、入札などに必要な期間を考慮して、次年度に購入することとしたためである。 H26年度の交付額は、上記の残余金とH26年度配分予定額100万円とを合わせて227万円となるが、上記の倒立顕微鏡(周辺機器を含めて約100万円)の購入や酸素濃度計の更新(約20万円)、および、菌株の分子系統解析に関わるDNA試薬などの購入と成果報告のための旅費や採集旅費など(計約100万円)に使用したいと考えている。
|
Research Products
(1 results)