2014 Fiscal Year Research-status Report
堰の織り成す農村景観の成り立ちの解明および未来へ継承する方策の研究
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25450509
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
村上 修一 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (60283652)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 文化的景観 / 先人の知恵 / 農村景観 / 農業水利 / 河川景観 / 歴史的頭首工 / 地形 / シークエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
まず,昨年度から当年度当初にかけて現地踏査し現存を確認した旭川水系の堰891例について,地形や土地利用との関係を分析した。その結果116例については,土木史研究で示唆された伝統的河川取水システムに符号する地形との関係性を有することが明らかとなった。これらの堰を訪れる見学者は,近代以前の川との関わり方を,堰と川の地形との関係という形で実際に目にすることが可能と考えられる。また,符合しない堰が相当数あることについては,沿岸の造成に伴う平坦地化あるいは堰や護岸の改修に伴う取水点の移動といった近代の開発経緯により,川の地形との関係が従前より変化した可能性が,土地利用の分析より推察された。 次に,昨年度の研究で浮上した,蛇行の外側に取水点があり山塊が隣接する型式の歴史的斜め堰90例を対象として現地調査を行い,取水点からの眺望行為を想定した視点場付近の状況の記録や,眺望の対象となる堰,河道,山塊の景観構成について写真撮影を行った。今後データの分析を行い,景観の基本構成や類型による違いを明らかにすることで,伝統的河川取水システムに根差した景観資源としての価値を探る予定である。 さらに,歴史的斜め堰の幹線水路沿いの移動体験を想定した眺望景観の特徴を明らかにするために,大井手用水(旭川水系)と堀川用水(筑後川水系)の取水口から幹線水路の末端まで100m間隔で撮影した写真を用いて景観の諸要素や構成を分析した。その結果,主要な景観要素として水路,山塊,田,分水施設が浮上し,地形に対応した導水の様子が景観の特徴に現れていることが共通点として明らかとなった。なお,小川江筋堰(夏井川水系)についても同様の現地調査を夏季に実施したが,水路沿いの調査が困難な状況であったため,当年度末にあらためて実施し調査を完了した。今後調査結果の分析を行い,幹線水路沿いを移動する際の景観の特徴を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究実施計画に記載した内容(堰に関わる景観要素の特徴と問題の把握)のうち,堰の受益地の現地調査については,目標としていた10例のうち3例の完了に留まったものの,平成27年の研究実施計画に記載した内容(沿道での撮影)も既に完了している。その他の事例についても過年度の現地調査の折に予備調査を行っている。さらに過年度で浮上した具体的な課題(旭川水系での網羅的な堰の把握,堰取水点での眺望景観の類型化)について,成果の公開や調査の完了に至っている。次年度計画の前倒しや新たな課題に向けた研究の先行を考慮すれば,研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
過年度の研究成果の公開(堰取水点での眺望景観の類型化,小川江筋沿いの景観の特徴)に向けたまとめの作業を行う。また,未着手の堰の受益地について,現地調査を行うとともに,堰の織り成す景観の構造について分析を進めていく。
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Causes of Carryover |
昨年度末から当年度当初にかけて実施した現地調査の旅費の一部が繰り越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
堰の受益地を対象とする現地調査にかかる旅費の一部として使用する予定である。
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