2014 Fiscal Year Research-status Report
転写因子IRF-2を分子標的とした癌幹細胞除去戦略
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25460061
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
佐藤 卓 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 非常勤講師 (40375259)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 組織幹細胞 / 癌幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの研究において、脱毛の生じたIrf2-/-マウスでは、CD34陽性バルジ幹細胞が著しく減少しており、また、少ないながら生き残った幹細胞においてもバルジ幹細胞マーカー発現が低下していることを見出した(定量的PCR)。本年度は、この点をより詳細に検討するために、Irf2+/-及びIrf2-/-マウスの各々からCD34陽性幹細胞をセルソーターを用いて精製し、網羅的な遺伝子発現解析(マイクロアレイ)を行い、得られたデータをもとに、Gene Set Enrichment Analysis (GSEA)を行った。定量的PCRがより限られた遺伝子(本実験ではバルジ幹細胞マーカー)について発現を比較検討するのに対し、GSEAではバルジ幹細胞に特徴的に発現することが既に報告されている、複数の遺伝子の集まり(遺伝子セット)が、比較するサンプル間でどのような偏った発現パターンを示すかを検討する手法である。解析の結果、定量的PCRの結果と同様、この方法によってもIrf2-/-マウス由来のバルジ幹細胞では、コントロールマウス由来のバルジ幹細胞に比べ、バルジ幹細胞遺伝子セット発現が有意に低下していることが確認された。さらに、Irf2-/-マウスに認められる、このような幹細胞性低下のメカニズムについて明らかにするために、マイクロアレイデータをもとにパスウエイ解析を行った。本解析には、IPA(Ingenuity Pathways Analysis)を用いた。その結果、複数のパスウエイがIrf2-/-マウスのバルジ幹細胞で変化している可能性が予測され、特に興味深い変化の一つとしてbeta-cateninシグナル経路の抑制が示唆された。これまでに、表皮細胞特異的beta-catenin欠損マウスでは、Irf2-/-マウスに類似した皮膚の表現型及び毛包幹細胞の減少が報告されており、Irf2とbeta-cateninシグナル経路と間に直接的な相互作用があるのか興味が持たれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Irf2-/-マウスに認められる毛包幹細胞の減少メカニズムについて、パスウエイ解析を取り入れ、その候補パスウエイの予測までには至ったものの、その裏付けが未だ十分ではない。また、発症効率の良い皮膚発癌モデルの作製が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
Irf2-/-マウスに認められる毛包幹細胞の減少メカニズムについては、第一にこの現象が表皮幹細胞に対する直接的なIFNシグナルの影響かを明らかにする必要がある。このために、これまでに、Irf2-/-マウスと表皮細胞特異的にIFNシグナルを欠損するマウスを交配しており、本年度中に同マウスを用いた解析が可能である。一方、発癌モデルの作製については、既にIrf2を欠損し、かつ毛包幹細胞特異的に薬剤誘導性にCreを発現するマウス(Irf2-/-: Krt15CrePGR: Rosa26-lsl-LacZ)の作製を終了しており、本年度中にさらにこれらと発癌モデルマウスの交配を行うことで、癌幹細胞維持におけるIRF2の必要性を検討する。
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