2015 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子IRF-2を分子標的とした癌幹細胞除去戦略
Project/Area Number |
25460061
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
佐藤 卓 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 非常勤講師 (40375259)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 組織幹細胞 / 癌幹細胞 / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍組織には、化学療法や放射線治療に抵抗性の癌幹細胞が存在する。同細胞の発見によって、これまでのような単に癌を小さくする治療ではなく癌幹細胞を駆逐する治療の考案の急務となった。いくつかのがんでは、癌幹細胞の起源が正常組織幹細胞であることが判明している。毛包幹細胞は、マウス皮膚癌モデルの解析において、皮膚がんの発生母細胞であることが示されている。従って、正常毛包幹細胞(HFSC)の機能低下を誘導しうる手法は、そのまま皮膚癌幹細胞を駆逐する戦略として応用可能である。これまでに申請者は、生理的に微量に分泌されるインターフェロン(IFN)の制御不全が血液幹細胞に著しい機能低下を起こすこと見出しており、このIFNの作用を癌幹細胞の機能低下に応用できないかと考えた。IFNの毛包幹細胞への作用を検討するため、本研究ではIrf2欠損(Irf2-/-)マウスを用いた。IRF2は、IFNシグナルを負に制御する転写因子であり、Irf2-/-マウスでは加齢に伴い脱毛やヒト乾癬様の皮膚病変を生じる。本研究においてIrf2-/-マウスではHFSC機能が著しく低下していることを見出し、またこれらの細胞においてIFN誘導性遺伝子発現の亢進を確認した。さらに、遺伝子発現パターンの解析からIrf2-/-マウスの毛包幹細胞が表皮細胞への「異常分化」を示唆する結果を得た。この結果を踏まえ本年度は、in vivoでIrf2-/-マウス毛包幹細胞の運命追跡が可能なマウスを樹立し、それらの細胞が実際に抜毛刺激によって表皮細胞へと異常分化することを見出した。今後は、このIFNシグナルによって生じる幹細胞機能低下の分子メカニズムをより詳細に検討するとともに、発癌マウスモデルを用いて抗がん剤などとの併用によって癌幹細胞が減少するかを明らかにしたい。
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