2014 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア外膜のトラフィックを担うタンパク質の構造機能解析とその創薬への応用
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25460066
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
篠原 康雄 徳島大学, 疾患プロテオゲノム研究センター, 教授 (60226157)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 外膜 / VDAC |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではミトコンドリア外膜を介した溶質の輸送を司る電位依存性アニオンチャネル(voltage dependent anion channel, VDAC)とカルニチンパルミトイル基転移酵素(carnitine palmitoyltransferase, CPT1)に焦点を当て、これらのタンパク質の構造と機能の理解を通じて、ミトコンドリア外膜の溶質輸送機構とこれを対象としたミトコンドリア機能制御剤の開発をめざす。 昨年度はCPT1に重点をおいた研究を進めたため、本年度はVDACに焦点をあてて研究を推進した。申請者らはすでにラットのゲノム中にはVDAC1をコードする遺伝子に16本もの偽遺伝子があることをすでに見出していた(Mamm Genome 23(2012)286)。そこで、マウスおよびヒトのゲノムも含め、より丁寧な解析を行った。その結果、ラット、マウス、ヒトのゲノムにそれぞれ16、15、13本のVDAC1の偽遺伝子が、また構造類似性のやや劣る偽遺伝子候補が4、2、1本存在することが明らかになった。偽遺伝子候補が本当の偽遺伝子かどうかの解析を進めた結果、ラットの2種の偽遺伝子とマウスの1種の偽遺伝子候補はそれぞれマウスとラットの真正の偽遺伝子と遺伝的に保存されている(syntenyである)ことが判明した。 syntenyである偽遺伝子は進化の過程においてラットとマウスが種として分岐する前に形成されたため、両種で遺伝的に保存されている。一方で、偽遺伝子候補がsyntenyなcounterpartを持ちあわせていたことは、これらの偽遺伝子候補もまた本物の偽遺伝子であることを強く示唆する結果である。 今回見出されたsyntenyな組み合わせは、単にラットとマウスの進化の歴史を紐解く目的だけでなく、偽遺伝子候補を偽遺伝子であると判別するための有用な情報を与えるものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本件旧では当初標的として掲げたミトコンドリア外膜の2種のタンパク質のうち、VDACに焦点をあてた解析を進めた。 その結果、哺乳類のゲノムにはVDAC1をコードする遺伝子に多くの偽遺伝子が存在すること、また、ラットとマウスのVDAC1の偽遺伝子候補がsyntenyなcounterpartを持ち合わせていることを明らかにすることができた。 これらの知見はVDACのmRNAやゲノム解析においても重要な情報を与える基礎的な知見であり、本研究目的の達成に大きく寄与することができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度はCPT1に、また26年度はVDACに焦点をあてた研究を進め、それぞれ学術論文の発表につなげることができたことは特筆に価する進捗であると考えている。 H27年度も特に変更の予定は無く、引き続き興味深い知見の発掘に努めたい。
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Causes of Carryover |
平成27年3月末の納品となったため、支払いが翌4月となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年4月払に支払い完了予定。
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Research Products
(5 results)