2013 Fiscal Year Research-status Report
ポドプラニンを標的とした悪性胸膜中皮腫に対する新規抗体療法の開発
Project/Area Number |
25460189
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
阿部 真治 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (00403717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西岡 安彦 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (70274199)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | トランスレーショナルリサーチ / 抗体医薬 / ADCC / ポドプラニン / 悪性胸膜中皮腫 |
Research Abstract |
本研究は、治療抵抗性の悪性腫瘍であり我が国において今後も患者数の増加が予想される悪性胸膜中皮腫に対して、ポドプラニンを標的とした腫瘍特異的抗体医薬を用いて新規機序の治療法を開発することを目的としている。ポドプラニンは脳腫瘍や各種扁平上皮癌など様々な悪性腫瘍において高発現することが知られており、悪性胸膜中皮腫においても発現することが知られている。そこで、悪性胸膜中皮腫における発現頻度を調査するため、ヒトの悪性胸膜中皮腫臨床組織を用いて免疫組織染色を行い、ポドプラニンの発現を詳細に検討した。その結果、ヒトの悪性胸膜中皮腫症例におけるポドプラニンの発現率は80%以上であり、ポドプラニンは悪性胸膜中皮腫において高頻度に発現することが明らかとなった。標的分子の発現率は治療の汎用性に直結しており、ポドプラニンを標的とした治療法の開発は悪性胸膜中皮腫の治療成績を劇的に改善する可能性が考えられた。そこで次にポドプラニンに対する新規抗体医薬を用い、その抗腫瘍効果についてin vitroで検討を行ったところ、ポドプラニン陽性ヒト悪性胸膜中皮腫細胞株に対する抗体依存性細胞障害活性(ADCC; antibody-dependent cellular cytotoxicity)ならびに補体依存性細胞障害活性(CDC; complement dependent cytotoxicity)を介した細胞障害作用を有することが認められた。以上の結果より、ポドプラニンを標的とした新規抗体医薬は悪性胸膜中皮腫に対して有効な治療法となり得る可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画において、平成25年度はヒト悪性胸膜中皮腫組織におけるポドプラニンの発現を確認すること、抗ポドプラニン抗体の抗腫瘍活性を明らかにすることが目的であった。まず、ヒト悪性胸膜中皮腫組織を用いたポドプラニンの発現に関する検討では、免疫組織染色を行うことにより、悪性胸膜中皮腫においてポドプラニンが高頻度に発現することが明らかとなった。次にin vitroにおける抗ポドプラニン抗体の抗腫瘍効果について検討したところ、抗ポドプラニン抗体はADCC活性およびCDC活性を誘導し、ポドプラニン陽性悪性胸膜中皮腫細胞株に対する細胞障害活性を有することが明らかとなった。以上のように現時点において平成25年度における主な目的は達成しており、研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
In vitroにおいて様々な条件における詳細な抗腫瘍効果の検討がまだ未実施であるため、平成26年度も継続してin vitroにおける抗ポドプラニン抗体のADCC活性およびCDC活性の検討を進める。手技的には平成25年度の研究で用いた手法とほぼ同様であるため、問題は生じないと考える。また、in vitroにおいて細胞障害活性を有することがすでに明らかとなっているので、悪性胸膜中皮腫移植マウスモデルを用いてin vivoにおける抗ポドプラニン抗体の抗腫瘍効果について検討を進める予定である。マウスモデルは我々の研究グループにおける以前の検討ですでに確立した手法で作成を行うため、問題が発生する可能性は極めて低いと考えられる。以上の計画を実行し、さらなる検討を進めることにより抗ポドプラニン抗体の有用性を明らかにしていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度はおおむね順調に研究計画を進展させることができたものの、ポドプラニンの発現解析およびin vitroにおける細胞障害活性測定の条件設定に想定以上の時間を要した。そのため、in vitroにおける新規抗体医薬の細胞障害活性についてさらに詳細な部分まで検討を行うことができず、細胞培養関連試薬などの購入を予定通りに行うことができなかった。また、期間中に成果発表を行う機会も限られており、繰り越しが生じた。 次年度は当初の研究計画に従い、新規抗体医薬の詳細な抗がん作用を明らかにするため、in vitroおよびin vivo実験を進めていく。特にin vitroの実験においてはこれまでに得られたデータを基にさらに詳細な検討を行う予定であるため、その際に各種細胞培養関連試薬の購入が必須であると考えられる。そのため次年度に繰り越した353,101円のうち約250,000円を細胞培養関連試薬の購入に充てる予定である。また、次年度は平成25年度に得られたデータを基に、研究成果の発表ならびに報告をより積極的に行う予定であり、これに残りの繰り越し助成金を使用する。
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Research Products
(1 results)