2014 Fiscal Year Research-status Report
心筋細胞ACh産生系制御による代謝リモデリング介入効果についての基盤的研究
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25460333
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
柿沼 由彦 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40233944)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遺伝子改変マウス / アセチルコリン / 心機能 / 心室筋 / エネルギー代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究において用いる心室筋特異的ChAT(choline acetyltransferase) tgmにおいては、心室におけるGlut4蛋白発現亢進による糖利用の亢進が起きていることを、2-NDBGを用いた蛍光ラベルグルコース取込による機能解析で明らかとなった。この現象は、ChATを強制発現させたHEK293細胞を用いた実験においても糖利用亢進が認められ (Cell Physiol Biochem 2014)、細胞内ACh産生亢進状況においては糖利用が促進されることが確認された。 これは、近年報告されるようになったa non-neuronal cholinergic system (NNCS) と呼ばれる細胞内でAChを産生するシステムには、その細胞を糖代謝に傾かせる機能があるということが示唆された。そしてこの結果によって、我々が以前に報告したin vitro実験結果からの知見として、NNCSは細胞においてミトコンドリアに対して作用し、その細胞の酸素消費量を抑制させることとなんら矛盾しないことが証明された。 また本遺伝子改変マウスChAT tgmには、上記のような心臓エネルギー代謝学的特徴を持つことが明らかとなったが、これが原因で寿命が短縮されることは、野生型マウスとの比較では認められなかった。 さらに、本マウスの心機能を、人工呼吸管理下心尖部アプローチによるコンダクタンスカテーテルによって野生型と比較したところ、EF・HRについては有意差なく、むしろCO・SVまた心臓容積(ESV・EDVともに)においては有意差をもって増加していた。このことは、ChAT tgmの心臓収縮機能については少なくとも野生型を比較して低下はしていないことが確認された。 このマウスは、行動解析により夜間での行動量が野生型よりも約20-30%有意差をもって減少しており、心臓特異的にChATを発現させたことで中枢神経系への影響を及ぼすことをしめしていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの報告してきた培養実験結果とほぼ矛盾しない結果がin vivoの実験において得られている。またin vitro実験のデータによって得られた結果から予想される新たな表現型についても、トランスジェニックマウスを用いたin vivo実験においても、その予想を示唆するサポートするデータとなっている。以上のことより、心臓内ACh作動系を亢進させることは、そのエネルギー代謝をよりグルコースに依存するような傾向へとシフトさせていることが確認された。さらに、他の複数の研究グループにおいても、2013-14にかけて、我々とは全く独立していながらも、ほぼ同じ内容の研究結果を報告していることも、本研究が順調に進んでいると評価できる理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで心臓を中心に解析してきておりその結果、a non-neuronal cholinergic systemは心筋においてその糖利用を促進させ、エネルギー代謝を糖代謝に強く依存する作用をもつことが明らかとなったのだが、その他に新たなフェノタイプが確認された。このフェノタイプは明らかに心臓特異的にChATを発現させたことによる結果であることが強く示唆されたことから、今後中枢への影響が、どのような分類にあてはまるものとして特徴づけられるのか、解析していく。
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Causes of Carryover |
当該年度は研究進捗状況が予想よりも早かったため、本来の最終年度(今年度の平成27年度)予定額から一部繰り越した額で研究を行った。そのため、その一部が残額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残約50万円は、現在の研究進行状況から見ると充分に使用可能な額であり、むしろ最終年度途中で全額執行してしまうものと考えられる。早期に執行し、その後研究発表のための論文作成に早急にとりかかる計画である。
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