2014 Fiscal Year Research-status Report
うつおよび糖尿病を考慮したがん治療における疼痛制御に関する薬理学的研究
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25460335
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
江頭 伸昭 九州大学, 大学病院, 准教授 (80352269)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 痛み / 末梢神経障害 / がん治療 / 炎症反応 / うつ病 / 糖尿病 / TLR4 / 抗がん剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
オキサリプラチンなどの抗がん剤は、末梢神経障害を必発し、身体的苦痛から患者のQOLを著しく低下させるだけでなく、がん治療の変更や中止を余儀なくさせることから、臨床上大きな問題となっている。一方、がん患者は不安やうつ症状などの精神症状や比較的高齢者が多いため糖尿病などの生活習慣病を併発している場合が多い。しかし、抗がん剤による身体的苦痛とうつ症状などの精神症状や糖尿病との関わりについてはほとんど科学的な解明は行われていない。そこで、本研究では、がん治療における痛みとうつ症状などの精神症状や糖尿病との関係を解明し、その機序に基づいた予防・治療策を探索している。 平成26年度は、抗がん剤による末梢神経障害と糖尿病、うつとの関係を調べるために、2型糖尿病モデルラットであるGKラットを用いて、パクリタキセル を週に 1 回、4 週間連続で腹腔内投与し、痛みやうつについて検討を行った。GKラットは、対照群であるWistar系ラットに比べて体重は低値で、血糖値は高値であったが、それらに対してパクリタキセルの投与は何ら影響しなかった。一方、末梢神経障害については、Wistar系ラットではパクリタキセルによって機械的アロディニアや冷感過敏がみられたが、GKラットではみられなかった。また、GKラットはうつ行動がみられた。このように、GKラットでは痛み行動がみられないことから、本研究には不適切であることが明らかとなった。一方、パクリタキセル誘発末梢神経障害に対して組織学的および形態学的評価や関連マーカーの測定を行い、その発現には、脊髄後根神経節細胞におけるケモカインの発現の誘導と、それに続くマクロファージの遊走による炎症反応、さらにその上流として TLR4 が関与している可能性を見出した。これらは抗がん剤による末梢神経障害の新しい予防・治療ターゲットとなりうる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに、培養細胞を用いてオキサリプラチンによる細胞障害および神経突起の進展阻害に対する各種薬剤の効果について検討を行い、新規糖尿病薬のGLP-1アナログであるエキセナチドがオキサリプラチンによる神経突起の進展阻害作用を著明に抑制することを見出した。さらに、動物実験において、オキサリプラチンによる末梢神経障害に対してエキセナチドが回復を著明に促進することを明らかにした。また、エキセナチドはオキサリプラチンの主作用である抗腫瘍効果には影響しないことも明らかにした。一方、パクリタキセル誘発末梢神経障害に対しては、組織学的および形態学的評価や関連マーカーの測定を行い、その発現に、 TLR4を介した脊髄後根神経節細胞におけるケモカインの発現の誘導と、それに続くマクロファージの遊走による炎症反応が関与していることを見出した。また、糖尿病動物モデルを用いた末梢神経障害の検討については、2型糖尿病モデルラットであるGKラットを用いてパクリタキセルによる末梢神経障害について検討を行ったところ、うつ行動は観察されたが、痛み行動がみられないことから、本研究には不適切であることが明らかとなった。今後、1型糖尿病動物モデルやその他の2型糖尿病動物モデルを用いて検討を行う必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
パクリタキセル誘発末梢神経障害に対しては、組織学的および形態学的評価や関連マーカーの測定を行い、その発現に、 TLR4を介した脊髄後根神経節細胞におけるケモカインの発現の誘導と、それに続くマクロファージの遊走による炎症反応が関与していることを見出した。そこで今後は、これをターゲットとして、培養細胞実験や動物実験において各種薬剤の評価を行い、有効な候補薬剤を探索する。 糖尿病動物モデルの検討については、平成26年度は、2型糖尿病モデルラットであるGKラットを用いてパクリタキセルによる末梢神経障害について検討を行ったが、痛み行動がみられないことから、本研究には不適切であることが明らかとなった。そこで今後は、1型糖尿病動物モデルであるストレプトゾトシンの動物モデルやその他の2型糖尿病動物モデルを用いて検討を行う予定である。適切な動物モデルが確立されれば、組織学的および形態学的評価や関連マーカーの測定を行う予定である。さらに、脊髄後根神経節神経の培養細胞等を用いて、神経突起の伸展阻害の観点から、ストレスホルモン、炎症性サイトカイン、MAPキナーゼ、活性酸素、TRPチャネルなどの影響を検討するとともに、Rho活性、プロテインキナーゼ、カルシウム、BDNF、ERKなどに関する種々の薬剤や、抗うつ薬、ノイロトロピン、GLP-1アナログなどの新規糖尿病用剤の作用を評価する予定である。
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Causes of Carryover |
糖尿病動物モデルでの実験で、GKラットを用いて検討を行ったが、動物モデルとして不適切であることがわかり、平成26年度はこれ以降の検討を実施することができなかったため、支出が予定より減少し、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、糖尿病動物モデルでの実験で、1型糖尿病動物モデルや他の2型糖尿病動物モデルで検討を行う予定であるので、市販の糖尿病動物の購入のために、平成26年度の未使用額も使用する計画である。
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Research Products
(9 results)