2013 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子ネットワークによる形質細胞分化の調節プロセスの解明
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25460352
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
武藤 哲彦 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80343292)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | B細胞 / 形質細胞 / クラススイッチ / 転写因子 / Bach2 |
Research Abstract |
抗原で活性化されたBリンパ球(B細胞)は、抗体を分泌する形質細胞へ最終分化する。その際、一部の活性化B細胞はクラススイッチDNA組換え反応を実行し、抗体のアイソタイプを変換する。このときB細胞ごとの運命決定は確率的であり、遺伝子発現の変化を伴う。しかし、ヘテロ名細胞集団をサンプルとする従来型の遺伝子発現の解析方法では、個々の細胞で確率的に起きる遺伝子発現の変化を捉えられないため、細胞運命決定の全容を理解することは出来ていなかった。そこで、本研究では、シングルセル(単一細胞)PCR法を用いて遺伝子発現を解析し、活性化B細胞の分化過程を制御する遺伝子ネットワークの変化を捉え、形質細胞分化過程での細胞運命決定のプロセスを解明することを目的とした。私たちは、転写因子Bach2が形質細胞分化のマスター制御因子であるBlimp-1の遺伝子発現を調節することで、細胞の運命決定に貢献することを見いだしている。平成25年度は、マウス脾臓B細胞を培養系で分化誘導して経時的に細胞を回収し、形質細胞分化もしくはCSR反応を調節する転写因子群の遺伝子発現をシングルセルPCRで解析するために、最適な培養条件を見いだすことを目指した。そのため、野生型マウスより脾臓B細胞を採取し、そこからB細胞を単離後、B細胞の刺激剤であるリポポリサッカライド単独の刺激もしくはリポポリサッカライドに加えてT細胞系のサイトカインであるインターロイキン4と複合的に刺激を加えた場合のふたつの条件下で培養し、経時的に細胞を回収した。回収した細胞における遺伝子発現を定量PCR法で検討し、シングルセルPCRを実施するのに最適な培養条件および培養時間を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、野生型マウス脾臓B細胞を採取し、リポポリサッカライド単独刺激もしくはリポポリサッカライドに加えてインターロイキン4の併用刺激した。そして、経時的に0から3日目まで細胞を回収し、形質細胞分化マーカーとしてBlimp-1遺伝子、クラススイッチの指標としてAicda遺伝子の発現を定量PCR法で検討した。本実験では、細胞集団を用いた条件検討であるため、Blimp-1およびAicda遺伝子の発現が両方とも高く誘導される培養条件及び培養時間を探した。その結果、リポポリサッカライド単独刺激した培養の2日目で両者の遺伝子発現が高く誘導されることを見いだしたため、本条件を採用することとした。さらに、B細胞の活性化応答では、細胞分裂回数に依存して細胞分化が進行することが明らかにされている。そこでリポポリサッカライド単独刺激下で2日間培養する際に、蛍光色素CFSEで細胞を染色し、この色素の段階的な減衰率で細胞集団を分裂回数に基づいて独立して回収し、検討するべき細胞集団のさらなる絞り込みを実施する予定である。 一方で、当初の予定では、Blimp-1遺伝子の発現をGFP蛍光タンパク質でモニター出来るレポーターマウスを用いて、細胞を分画する計画であった。本年度にBach2遺伝子の発現を蛍光タンパク質でモニター出来るマウスを入手することが出来たため、これら2系統のマウスを交配してBach2およびBlimp-1遺伝子の発現を同時にモニター出来るマウスを作出した。そのマウスより脾臓B細胞を採取し、培養系で刺激した結果、両者の遺伝子発現の相関性を単一細胞レベルでダイナミックに捉えることが出来ており、実験計画に想定した以上の結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
B細胞の活性化応答では、細胞分裂回数に依存して細胞分化が進行することが明らかにされている。そこで今後の予定の第一には、リポポリサッカライド単独刺激下で2日間培養する際に、蛍光色素CFSEで細胞を染色し、この色素の段階的な減衰率で細胞集団を分裂回数に基づいて独立して回収し、検討するべき細胞集団のさらなる絞り込みを実施する予定である。さらにシングルセルPCRにて検討する予定の遺伝子候補を数十まで挙げ、検討中である。さらに、候補遺伝子として近年幾つかの新たな転写因子が関与するという報告があるため、これらを追加する。また、クラススイッチに先立って、蛋白質をコードしないgermline transcriptと呼ばれる転写が、抗体重鎖遺伝子上で発生する。このクラススイッチの予告的な転写産物も併せてモニターすることで、さらにクラススイッチする細胞集団を同定する精度を上げられる可能性がある。そこで、シングルセルPCRで検討する遺伝子の候補にこれらを追加することを検討する。そのうえで、野生型マウス由来の脾臓B細胞を対象としたシングルセルPCRを実施し、活性化B細胞集団の中でクラススイッチする細胞集団と形質細胞分化する細胞集団を同定していく。 そのうえで、Bach2遺伝子ノックアウトマウス由来の脾臓B細胞で同様な実験を実施する。そして、野生型マウスB細胞で得られた結果と比較することで、転写因子Bach2がこの細胞運命決定において、どの様な役割を果たしているのかを明らかにする。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Association between BACH2 expression and clinical prognosis in diffuse large B-cell lymphoma.2014
Author(s)
Ichikawa S, Fukuhara N, Katsushima H, Takahashi T, Yamamoto J, Yokoyama H, Sasaki O, Fukuhara O, Nomura J, Ishizawa K, Ichinohasama R, Muto A, Igarashi K, Harigae H.
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Journal Title
Cancer Sci.
Volume: 掲載確定
Pages: 掲載確定
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Over-expression of BACH2 is related to ongoing somatic hypermutation of the immunoglobulin heavy chain gene variable region of de novo diffuse large B-cell lymphoma.2013
Author(s)
Kikuchi T, Tokunaka M, Kikuti YY, Carreras J, Ogura G, Takekoshi S, Kojima M, Ando K, Hashimoto Y, Abe M, Takata K, Yoshino T, Muto A, Igarashi K, Nakamura N.
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Journal Title
Pathol Int
Volume: 63
Pages: 339-344
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] BACH2 represses effector programs to stabilize T(reg)-mediated immune homeostasis.2013
Author(s)
Roychoudhuri R, Hirahara K, Mousavi K, Clever D, Klebanoff CA, Bonelli M, Sciume G, Zare H, Vahedi G, Dema B, Yu Z, Liu H, Takahashi H, Rao M, Muranski P, Crompton JG, Punkosdy G, Bedognetti D, Wang E, Hoffmann V, Rivera J, Marincola FM, Nakamura A, Sartorelli V, Kanno Y, Gattinoni L, Muto A, Igarashi K, et al.
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Journal Title
Nature
Volume: 498
Pages: 506-510
DOI
Peer Reviewed
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