2013 Fiscal Year Research-status Report
混合型小細胞肺癌の発生機構:Notchシグナルからの解明
Project/Area Number |
25460439
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
伊藤 隆明 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (70168392)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新森 加納子 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (30457600)
長谷川 功紀 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (50525798)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肺小細胞癌 / 混合型 / Notchシグナル / エピジェネティックス / DNAメチル化 / ヒストンアセチル化 |
Research Abstract |
混合型小細胞肺癌は、その存在は病理医には広く知られているが、その意義や発生機構の研究はほとんどされてこなかった。混合型肺小細胞癌は、非小細胞癌成分を有した小細胞癌で、その頻度は、外科切除検体では比較的高頻度であることが報告されている。また、混合型小細胞癌に含まれる非小細胞肺癌成分は、大細胞癌、腺癌、扁平上皮癌の順に多いとの報告があるが、大細胞癌成分の存在の評価は病理医によってばらつきがあると思われる。混合型小細胞癌の発生については、腫瘍の発育が進むにつれ増加する、あるいは、化学療法などにより出現するなどと考えられているが、stageI期の未化学療法・手術例でも混合型小細胞癌が存在することは、腫瘍の早期の段階から、このようなヘテロな組織像が形成されていることが想像される。 本研究では、発生や細胞の分化制御に重要なNotchシグナル経路が、この特殊な組織型の肺癌の形成を担っていて、生物学的な特性に影響しうること、また、Notchシグナル経路活性化の機序としてエピジェネティックスな機構が関与している可能性を検証したいと考えている。その解明のために、小細胞癌手術症例のNotch1, 3の免疫組織学的な検索、混合型小細胞癌でのlaser microdissection法を用いてのdriver mutation遺伝子解析、DNAメチル化解析、ヒストンアセチル化解析、ヒト肺小細胞癌株を用いての解析、Notch1遺伝子導入ヒト肺小細胞癌培養株の解析などを行い、Notchシグナル経路の混合型小細胞癌形成における意義と働き、その発現機構としてのエピジェネティックスの意義を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度明らかにしたことは、1)小細胞癌および非小細胞癌のNotch1, 3の免疫組織学的な結果と、混合型肺小細胞癌の免疫染色の結果は一致し、非小細胞癌の組織像にはNotch1,3の発現が見られ、小細胞癌部には発現は陰性であった。2)Notch1遺伝子導入したヒト小細胞癌株は、接着に関わる上皮性マーカーが出現し、また、その免疫不全マウスへの皮下移植により、腺様形態の形成に成功した。3)5-aza-dCによるDNAメチル化阻害によっても、Notch1非発現ヒト小細胞癌株では、Notch1の発現は見られず、また、Notch1のpromoter領域にはCpG islandが少ないことも考慮すると、小細胞癌のNotch1発現低下には、DNAメチル化の関与は乏しいと考えられた。 以上のように、Notch1は小細胞癌の上皮化に関与していることが明らかになり、一方で、混合型肺小細胞の癌の形成には、当初予想としていたDNAメチル化の関与は少ないことが明らかになってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、混合型小細胞癌形成におけるhistone mdificationの意義について検討する。1)各種アセチル化ヒストンに対して、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、混合型小細胞癌の手術材料を用いて免疫染色を行い、また、各種ヒト肺癌細胞株の Western blottingを行い、組織型別に、アセチル化ヒストンの発現様式を明らかにする。2)trichostatinに処理されたヒトNotch1陰性ヒト肺小細胞癌株を用いて、Notch1,3の発現誘導の有無を検討する。3)同細胞の、免疫不全マウスへの皮下移植により形成された腫瘍の形態変化の観察を行う。4)アセチル化Histone3を用いてのChip assayを行い、ヒト肺癌培養細胞においてhistone modificationがNotchの発現に関与しているかどうかを検討する。5)前年度の結果も含め、論文の作成を確実の行う。
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