2014 Fiscal Year Research-status Report
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25460470
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Research Institution | Department of Clinical Research, National Hospital Organization Nagasaki Medical Center |
Principal Investigator |
伊東 正博 独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター), 臨床研究センター, 機能形態研究部長 (30184691)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 正洋 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (50284683)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放射線影響 / 小児甲状腺がん / 発がん / チェルノブイリ / 福島第一原発事故 / 分子疫学 / 病理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年3月に福島原発事故が発生し周辺地域で甲状腺がん発症への不安が高まっているが、被曝形態や食事性ヨード環境はチェルノブイリ周辺地域では大きく異なっている。チェルノブイリ事故から29年が経過し周辺地域での甲状腺癌の発生は小児から成人にシフトし依然高い発生率が見られる。チェルノブイリ組織バンクには平成26年度は330症例の登録が追加され、これまでに5021例の組織登録が完了し、推定個人被曝線量の登録が昨年度から開始されている。チェルノブイリ組織バンクに集積された生体試料を用いた共同研究でゲノムDNA解析がなされ、被曝線量が高い小児甲状腺乳頭癌がん群の検討からfusion oncogeneの頻度が高いことが報告された。国内では原爆被爆関連甲状腺がん症例の登録が進んでいる。形態学的には被曝甲状腺癌には一つの決まった特徴はなく、被曝形式により形態学的にも分子生物学的にも多様な形態を呈することを報告した。低ヨード環境は小児甲状腺癌の発生頻度の上昇、潜伏期の短縮、充実性形態変化に影響を及ぼしていることが推察された。低ヨード環境の影響を見る目的で、非被曝成人症例の国際比較検討を行っている。今回、本邦とチェルノブイリ周辺地域の被曝歴のない成人の甲状腺乳頭癌症例を用いて臨床病理組織学的検討を行った。その結果、チェルノブイリ症例では小児、成人とも充実性成分を有する症例が多くみられ、ヨード環境や遺伝的背景の差が形態形成に差をもたらすこと、放射線感受性を考える上で環境因子の考慮が必要であることが報告した。共同研究者とDNA修復・遺伝子安定性維持機構の損傷の解析、microRNA解析を継続的に進め、DNA損傷応答遺伝子の多型性が甲状腺癌発症リスクになっている可能性を報告している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チェルノブイリ組織バンクへの新規登録は330症例があり、これまでに5021症例の組織登録が完了し、生体試料の有効活用が勧められている。共同研究の一つに被曝の影響の高いと考えられている若年者症例の組織を用い、fusion oncogeneの頻度が高いことが報告された。 昨年度は甲状腺病理の地域差を明らかにする研究を行い、論文化ができた。福島第一原発事故が発生し、チェルノブイリ原発事故と比較されることがしばしばなされるが、甲状腺発癌に放射線以外の環境因子も影響していることを考慮しなければならない。日本とチェルノブイリの違いの一つに、ヨード環境がある。日本は高ヨード接種地域に対し、チェルノブイリは低ヨード地域にある。昨年度は両地域で被爆の影響を受けていない成人症例を用いて、病理形態学的な比較を行った。ヨード環境の差が甲状腺がんの形態形成や増殖速度に大きく関与している可能性を指摘した。その結果はEndocrine Journalに掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
チェルノブイリ組織バンクへの新規登録症例の診断確定を行い、組織登録を継続推進する。約400症例の登録が見込まれる。 放射線影響研究所と共同研究として、保存ブロックを用いてGWSが可能か否かの検証実験が予定されている。 チェルノブイリ症例と本邦症例でBRAF変異の頻度の比較を、パラフィイン切片を用いて免疫組織学的に検討を行う予定。
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Causes of Carryover |
試薬やその他の消耗品類の購入費が予想を下回ったため余剰が発生した。理由の一つとして、共同購入や在庫試薬の利用で支出の抑制ができたことがあげられる。海外からの試薬の納品に時間が掛り、次年度決済になった試薬もあった。同時に、使用確定のしていない試薬の予備的購入は控えた。この分は次年度に使用できるメリットとして捉えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬や新たな抗体、プローブの購入費に充てる予定にしている。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] The Common Genetic Variant rs944289 on Chromosome 14q13.3 Associates with Risk of Both Malignant and Benign Thyroid Tumors in the Japanese Population.2015
Author(s)
Rogounovitch TI, Bychkov A, Takahashi M, Mitsutake N, Nakashima M, Nikitski AV, Hayashi T, Hirokawa M, Ishigaki K, Shigematsu K, Bogdanova T, Matsuse M, Nishihara E, Minami S, Yamanouchi K, Ito M, Kawaguchi T, Kondo H, Takamura N, Ito Y, Miyauchi A, Matsuda F, Yamashita S, Saenko VA.
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Journal Title
Thyroid
Volume: 25
Pages: 333-340
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Morphological difference in adult thyroid papillary carcinoma between Japan and Ukraine.2014
Author(s)
Ito M, Bogdanova T, Zurnadzhy L, Saenko V, Rogounovitch T, Mitsutake N, Kondo H, Maeda S, Nakashima M, Tronko M, Yamashita S.
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Journal Title
Endocr J
Volume: 61
Pages: 1221-1228
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Radiation-associated small cell neuroendocrine carcinoma of the thyroid: a case report with molecular analyses.2014
Author(s)
Mussazhanova Z, Miura S, Stanojevic B, Rougounovitch T, Saenko V, Shiraishi T, Kurashige T, Shichijo K, Kaneko K, Takahashi H, Ito M, Nakashima M.
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Journal Title
Thyroid
Volume: 24
Pages: 593-598
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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