2014 Fiscal Year Research-status Report
災害ストレスに脆弱な母子に対する心理社会的支援とそのためのシステム構築
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25460826
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
牛島 佳代 福岡大学, 医学部, 講師 (10336191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成 元哲 中京大学, 現代社会学部, 教授 (20319221)
守山 正樹 福岡大学, 医学部, 教授 (10145229)
田中 美加 東海大学, 健康科学部, 准教授 (70412765)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 原発事故 / 母親のメンタルヘルス / 子どもの健康・発達 / 生活変化 / 家族の不安定性 / 認識のずれ / リスク対処行動 / コホート調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、福島原発事故が避難区域外である福島県中通り9市町村の子どもとその母親の生活と健康にどのような影響を与えているかを社会疫学調査により明らかにする。その上で、災害ストレスに脆弱な母子を対象に心理社会的支援とそのためのシステム構築を行うことを目的とする。 これまで、福島県中通り9市町村の2008年度出生児及びその保護者を対象に2013年1月、2014年1月、2015年1月に、それぞれ第1回、第2回、第3回「福島原発事故後の親子の生活と健康に関する調査」を実施した。この調査は、事故後の生活環境の変化が母親の不安、身体の不調、子どもの発達・健康にどのような影響を及ぼすかを解明するコホート調査であるが、2015年4月末現在、第1回、第2回、第3回調査すべてに回答したのは1,200名である。 これまでの調査では、事故後の生活環境の変化は、時間とともに事故以前の状態に戻りつつあるものの、事故から4年が経過した時点においても、健康影響への不安、保養への参加意欲、経済的負担感、補償をめぐる不公平感は高い水準のままであり、約2割の人が放射能への対処をめぐる配偶者・両親・周囲の人との認識のずれを感じていることがわかった。また、母親のメンタルヘルスについても、全体としては時間の経過とともに改善傾向にあるものの、回復ができないまま慢性化している人が2割から5割ほどいることがわかった(評価尺度によって数値が異なっている)。更に、このような生活変化と母親のメンタルヘルスが全国平均を大きく上回る子どもの問題行動につながっていることを明らかにした。 これまでの研究成果は、調査対象者に速報値や論文送付、そして個人の変化を示した個票で還元するとともに、調査結果報告会とワークショップを実施した。また、新聞・テレビ報道などで広く社会に発信し、2015年3月には第1回調査の知見を『終わらない被災の時間』(石風社)として刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、調査対象者に対して第1回、第2回、第3回調査を実施できたことに加えて、調査結果を速報値や論文として送付したり、調査結果報告会やワークショップの開催を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も対象者に調査結果を効果的に還元することに務めるとともに、聞き取りやワークショップを積極的に開催することによって、災害ストレスに脆弱な母子が家族、地域の資源を使ってレジリエンスを獲得するための方策を、関係諸機関との連携の下、調査研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
自助努力により、物品費を当初の計画よりも低く抑えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に有効に活用したい。
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Research Products
(8 results)