2014 Fiscal Year Research-status Report
肝再生不全克服に向けた成熟肝細胞および肝前駆細胞の再生機構に関する研究
Project/Area Number |
25461008
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
滝川 康裕 岩手医科大学, 医学部, 教授 (50254751)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 急性肝不全 / 肝再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓が重症の肝障害を負った時に,肝臓の再生を担うのは通常の肝細胞(成熟肝細胞)ではなく,それより未熟な細胞であるオーバル細胞といわれているので,この細胞の増殖に必要な刺激物質あるいは細胞内の刺激伝達経路を実験的に検討した.急性肝不全の患者血漿ではオーバル細胞の増殖が引き起こされたが,健常者の血漿では増殖しなかった.そこで,急性肝不全の環境では,オーバル細胞のような未分化な細胞が,肝臓の組織修復や再生に動員されているものと推察され,その刺激の伝達経路も明らかになった.
上記の結果をふまえて26年度は,急性肝障害の患者において,肝臓組織の修復や再生に動員されるオーバル細胞の割合が,肝障害の程度により異なるのか,また,それをどのようにしたら患者に侵襲を与えずに検出できるのかを検討した.方法は,様々な程度の急性肝障害患者の肝臓の組織を採取し,特殊な顕微鏡観察で未分化(未熟)な細胞の割合を算出した.これと血液中の物質と比較することにより,肝臓内に動員されている未分化な細胞(オーバル細胞)の割合を,血液の所見から推定できるかを解析した.また,血液の解析は,正常な肝臓の切除モデルともいえる肝移植のドナーでも行い,病的な肝臓(急性肝障害)の場合と比較した.その結果,急性肝障害の患者では,肝組織内に重症度に応じて未分化な肝細胞(CK19陽性細胞)が動員されており,その割合は,血液中の胎児性蛋白(AFP)と比例することが明らかになった.また,肝移植ドナーでは,AFPは上昇しないことも明らかになった.このことは,病的肝臓(急性肝障害)では,肝組織の修復・再生に,オーバル細胞が動員され,その動員程度は,血中のAFPである程度推定できることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始初年度は,基礎的研究により,急性肝不全の血液により,未分化な細胞が増殖するシグナルを解明した. 2年目に当たる26年度はこれをふまえて,臨床場面で未分化な細胞の動員状況を把握する手法を見いだすことを目的とし,血液中のAFPがふさわしいことを見いだした. しかし,当初想定していたFGF7の臨床的意義はAFPほど明確ではなく,次の段階でFGF7の基礎的検討に入る計画を変更することとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
上記研究成果をふまえ,実際の肝障害局所では,未分化な細胞の動員・増殖に,どのような物質やシグナル伝達が関わっているのかを,実験的に検討し,肝再生の至適環境解明に向けた基礎的な成果を上げたい. 具体的には,肝の凝固切開モデルを用いて,炎症を伴う肝局所障害モデルを作成し,急性肝障害局所の細胞の遺伝子発現,蛋白発現を網羅的に検討し,再生環境を解明する予定である.
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Causes of Carryover |
物品の購入費を予算内に押さえるため,購入量をなるべく抑えたところ.購入額の端数と支給額との間に差が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の試薬購入に充てたい.
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