2014 Fiscal Year Research-status Report
吸入剤による呼吸筋収縮増強効果の検討とその機序の解明
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25461144
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
進藤 千代彦 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10216228)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 吸入ステロイド剤(ICS) / 長時間作動性交感神経刺激剤(LABA) / 一酸化窒素(NO) / 気管支喘息 / 慢性閉塞性肺疾患(COPD) / 横隔膜筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、吸入製剤である吸入ステロイド(ICS)と長時間作動性β2刺激薬(LABA)との配合剤、また長時間作動性抗コリン製剤(LAMA)の横隔膜筋への収縮特性に与える機序を解明することである。ICS/LABA配合剤は主に気管支喘息、及びLAMA吸入剤は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の吸入治療薬として臨床で広く使用されている。これらの吸入剤の横隔膜筋収縮に与えるような基礎的な検討については、これまで十分になされていないことから本研究を計画し、前年度のICS/LABA配合剤の検討に引き続き、今年度はLAMA吸入剤の効果を検討した。研究成果は以下の通りである。 長時間作動性抗コリン製剤(LAMA)であるところのTiotropium吸入剤(soft mist)を用い、動物はBALB/cマウスを用いた。LAMA吸入剤を経口的に1回(2.5μg)吸入させ、その吸入直後(0)、1、2、4時間後に、横隔膜筋収縮力として張力-周波数曲線を測定した。吸入2時間後(LAMA2)には低下傾向を示したが有意ではなく、その4時間後(LAMA4)には張力-周波数曲線がLAMA0に比較して有意(p < 0.05)に上方にシフトして、横隔膜筋収縮力を増強させていることが判明した。このLAMA2では、一過性にNADPH染色において軽度NO産生が増強していることが伺われたが、LAMA4では低下していた。張力-周波数曲線の変動と対応するようなNO産生状況が起こっていることが判明した。 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療剤としてLAMA吸入剤が広く使用されている。今回の結果である横隔膜筋の収縮力増加は、呼吸筋疲労状態を防御するように働くものと推察される。また、NADPH染色によるNO産生の防御は、LAMA吸入剤の抗炎症性に作用することを支持しているもので、これまで横隔膜筋での基礎的検討がなされていなかったことから大変興味ある結果であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度研究したICS/LABA配合剤の横隔膜筋収縮への効果についての論文は、“Effects of Long-Acting β2-Agonist and Corticosteroid Inhalation on Diaphragm Muscle in Mice” by C. Shindoh et al.のタイトルで、Journal of Drug Metabolism & Toxicologyにacceptされており、現在in pressの状態である。 今年度のLAMA吸入剤に関する研究はほぼ計画通りに進行し、本研究の成果は、国際医用エアロゾル学会(ISAM2015、5月30日~6月3日、ミュンヘン)でポスター発表をする予定である。また、同時にLAMA吸入剤については論文作成を行っており、Journal of Drug Metabolism & Toxicologyへの投稿を考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の計画通りに平成27年度の実験計画に沿って研究を推進する。 この動物モデルに対して、エンドトキシン(LPS)の投与の影響について検討する。エンドトキシン(LPS)の腹腔内投与(20 mg/kg)を行うと、4時間後には有意に張力-周波数曲線を低下させ収縮力の減少が惹起されるが、これに対してICS/LABA配合剤やLAMA吸入剤を同時に吸入させるとLPSによる収縮力減少を抑えるかどうか検討する。またNADPH diaphorase染色でNO産生を検討すると、LPS投与4時間後には筋線維横断面が濃染されNO産生が増加することが想定されるが、ICS/LABA配合剤やLAMA吸入剤を同時に吸入させるとこの増加を促成するかどうか検討する。iNOS mRNAの発現についても検討し、LPSの横隔膜筋への呼吸筋不全の誘導にこれらの吸入剤がどのように関わっているか検討する。 これまでの成果を踏まえて学会発表を行い、また論文の作成を主な方針として推進する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額(B-A)が3,874円生じたが、旅費支出額が少なかった事などが主な理由であると考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額(B-A)が3,874円については、その他として使用する。
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