2013 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫性自律神経節障害における自己抗体測定系の確立と臨床像解析
Project/Area Number |
25461305
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagasaki Kawatana Medical Center |
Principal Investigator |
中根 俊成 独立行政法人国立病院機構長崎川棚医療センター(臨床研究部), その他部局等, その他 (70398022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 理 独立行政法人国立病院機構長崎川棚医療センター(臨床研究部), その他部局等, 研究員 (50361720)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自己免疫性自律神経節障害 / 抗ganglionicアセチルコリン受容体 / LIPS assay |
Research Abstract |
抗ganglionicアセチルコリン受容体(gAChR)抗体は自己免疫性自律神経節障害(AAG)の病態において主たる役割を担っていると推測されている.AAGのうち約50%が陽性になると報告されている.本邦におけるまとまったAAGの調査検討は十分ではなく,それには新しい自己抗体測定系の確立が急務であった.我々は新規の抗gAChR抗体測定系を確立し,全国からの抗体測定依頼を受ける態勢を整備した.現在,抗gAChR抗体測定を含んだAAGの臨床像解析と,自律神経障害を呈するその他の神経疾患にこの抗体が関与する可能性についての検討を進めている.抗gAChR抗体測定系は生物発光を利用したタンパク質間相互作用解析法であるカイアシルシフェラーゼ免疫沈降を応用した検出法であり,gAChRのα3サブユニット・β4サブユニットに対する抗体測定を行っている.この検出法はLIPS (luciferase immunoprecipitation system) assayを基礎としてさらに発展させたものである. 現在までに全国諸施設より自律神経障害を呈した神経疾患患者血清(300検体・250症例)を送付いただき,抗gAChR抗体測定を行ってきており,抗gAChR抗体陽性AAG症例を集積している.抗体陽性AAGの臨床像としては急性発症する症例,慢性に経過する症例が存在することを確認した.臨床症候としては起立性低血圧,腸管蠕動障害,発汗障害,排尿障害を高率に認めたが,一部では感覚障害や無月経,偽性腸閉塞を呈した症例など非典型例もあった. 本抗体陽性となった症例(35症例)はAAG以外にもニューロパチーや重症筋無力症や脳症などで認められた.α3サブユニットに対する抗gAChR抗体は全例で陽性であるが, β4サブユニットに対する抗gAChR抗体も併せて陽性であった症例(9症例)も経験した.今後はこの抗体が陽性となる疾患とその症例を対象に病態と臨床像の追求を行っていきたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LIPS assayを基礎とした抗ganglionicアセチルコリン受容体測定法を樹立し,その測定系としての確認については既製品抗体を用いて行った.これまでこの抗体の測定としては米国のMayo Clinicで樹立されたradioimmunoprecipiationによる方法が主流であったが,同方法による測定とこのたび我々が樹立した方法では測定結果の陽性/陰性はほぼ一致しており,陽性である場合の抗体価の傾向も同様であることを確認した.AAG症例については50症例を蓄積できているが、このうち24症例で陽性となっており(陽性率は48.0%),これまでの米国からの陽性率に関する報告とほぼ同等である.以上の結果からも研究期間1年目の目標を達成できていると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
臨床的にAAGを含む自律神経障害を呈するニューロパチー実にさまざまなパターン(発症様式・臨床症状など)を示しており,その結果から 1)本邦でどれくらいのAAG患者が存在するか. 2)AAGと診断された症例のうちどれくらいの症例で抗ganglionic AChR抗体が陽性となるか. 3)自律神経障害を呈する疾患ではどれくらいの症例で抗ganglionic AChR抗体が陽性となるか. など疫学的事項について確認したい.今後はAAGだけではなく,自律神経障害を呈する神経疾患に対象を拡げ,血清サンプルをさらに収集していきたいと考えている.そしてこの抗gAChR抗体が陽性となる疾患,症例の臨床像を解析する予定である.継続的に抗体測定を行えた症例もあり、経過としては各種免疫治療により症状の改善,抗体価の低下を認めたが,治療効果が持続しない症例もあり,抗体価の推移からもAAGはself-limitedではない可能性が示された.抗体産生の持続性と病型(発症様式と経過)の解析は特に重要なテーマである.
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