2014 Fiscal Year Research-status Report
肥満・糖尿病が肝がんの発症と腫瘍関連マクロファージの極性に与える影響に関する研究
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25461333
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
薄井 勲 富山大学, 大学病院, 講師 (50377272)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 芳弘 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (10541956)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 肝細胞がん / 肥満 / 腫瘍関連マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、次の2つの課題の解明を目的としている。すなわち、(課題1)肥満・糖尿病がDEN誘導性肝がんの発症と腫瘍関連マクロファージ(TAM)の極性に与える影響、(課題2)DEN誘導性肝がんに浸潤するTAMの極性決定におけるHIF-1aおよびSIRT1の役割、である。 課題1として、前年度までに化学発がん物質DENによる肝がんの発現誘導の系を立ち上げた。平成26年度はここに、糖尿病治療薬であるメトホルミン投与群も設定し、解析を進めた。研究計画書では既報に従い50週齢のマウスを解析する計画だった。しかし、高脂肪食負荷の条件では既報より早く腫瘍が発症することが分かったため、主に30週齢前後で解析を行った。C57BL/6マウスに発現誘導された肝がんの数とサイズ、およびマクロファージの浸潤数は食餌性肥満によって増悪した。メトホルミンはこれらを低下させた。腫瘍の発現に伴い肝臓に浸潤するマクロファージは炎症性のM1様の極性を持ち、その数は腫瘍のサイズが大きいほど増加する傾向を認めた。現在までにMACSを用いて肝臓からのマクロファージの採取が終了している。これらに発現する遺伝子をreal time RT-PCRにて測定し、発がんに伴って浸潤するマクロファージの詳細な表現型を調べる予定である。 課題2では、マクロファージ特異的HIF-1a欠損マウス(KOマウス)にDEN誘導性肝がんを発症させた。C57BL/6マウスの解析同様、30週齢前後で肝がんとマクロファージの特徴を、KOおよび同腹仔コントロールマウスとの間で比較した。KOマウスでは肝細胞がんの数が減少し、サイズが小型化する傾向にあった。KOマウスから採取したbone marrow- derived macrophageは炎症関連遺伝子の発現が低かった。現在マウスの個体数を増やし、データの再現性について検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では当初、課題1、課題2ともに、化学発がん物質DENを投与後50週齢まで高脂肪処置を行い、マウスの解析を行う予定であった。平成26年度は高脂肪食処置後時系列を追ってマウスを解剖し、通常食群と高脂肪食群、HIF-1aの欠損群と野生型コントロール群の群間で、肝腫瘍の変化を最も確認しやすい処置期間として30週齢を決定した。30週齢前後で評価した肝がんの数とサイズ、およびマクロファージの浸潤数は食餌性肥満によって増悪した。既報では、腫瘍の成長に伴いTAMの極性は非炎症性のM2極性を得るとされている。しかしこれまで我々が調べた範囲では、腫瘍の成長に伴い浸潤してくるマクロファージは炎症のM1極性を持つものが多かった。平成26年度はさらに、抗腫瘍効果が報告されているメトホルミンの投与群を設定し、同時に評価を行った。食餌性肥満によって増悪した肝がんは、メトホルミン投与によって改善した。今後個体数を増やすと同時に、メトホルミンの抗腫瘍効果がマクロファージの機能変化を介するものであるのかについて検討を進める。 課題2では、マクロファージ特異的HIF-1a欠損マウス(KOマウス)にDEN投与+高脂肪食処置によって肝がんを発症させた。平成26年の中旬までには解析を開始するに十分な個体数を得ることができた。KOマウスでは肝がんの数が減少し、サイズが小型化する傾向にあった。KOマウスに由来するbone marrow- derived macrophage (BMDM)は炎症のマーカー遺伝子の発現が低かった。マクロファージ特異的なHIF-1aの欠損が、どのように腫瘍の発症と増殖に対し抑制的に作用するのか、その機序の解明が今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度までに、DENによる肝がんそのものの解析はほぼ順調に進んだ。一方、そこに浸潤するマクロファージについても、炎症性の特徴を持つこと、HIF-1aの欠損によって抗炎症性の特徴を得ると抗腫瘍性に作用することなど、一定の成果を得た。平成27年度には、これまで得られた結果について個体数を増やして確認すると同時に、次の点について検討を進める。 (1) マクロファージが腫瘍に与える影響について、腫瘍内のTAMばかりでなく、腫瘍外の環境の変化がどのように関与するのかを調べる目的で、肝臓に浸潤するマクロファージを、腫瘍内と腫瘍外の両方から採取し、その特徴を詳しく調べる。MACSにて採取したマクロファージの遺伝子発現に加え、FACSや組織免疫染色など、蛋白レベルの解析も行う。 (2) 肝がん細胞とマクロファージの共培養の実験を通じ、腫瘍の増殖に影響を与えるマクロファージ由来の液性因子の同定を試みる。 (3) これまでマクロファージの極性を炎症性/抗炎症性の面から解析してきた。炎症以外に、腫瘍の発生・増殖に影響を与え得る因子についても、食餌性肥満、メトホルミン投与、HIF-1a欠損などの条件で調べる。
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Causes of Carryover |
納入価格の誤差があり、残金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度配分額と併せて執行する。
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Research Products
(10 results)