2014 Fiscal Year Research-status Report
リアルタイムPCR法を用いた肺炎迅速鑑別・薬剤耐性診断系の構築と地域医療への応用
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25461517
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
久保 亨 長崎大学, 熱帯医学研究所, 客員研究員 (50444873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 秀一 独立行政法人国立病院機構(仙台医療センター臨床研究部), 臨床研究部ウイルスセンター, 臨床研究部ウイルスセンター長 (50172698)
森内 浩幸 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (90315234)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 感染症診断学 / 肺炎 / リアルタイムPCR |
Outline of Annual Research Achievements |
肺炎は本邦での死因の第3位であり、増加傾向にある。肺炎の診断では原因微生物の同定に苦慮することが多く、また近年薬剤耐性の 病原体による呼吸器感染症の蔓延も治療上の大きな問題となっている。結核感染症も依然我が国において大きな問題であり、長崎県の平成26年度の結核の人口10万人あたり新規罹患率は全国で2番目に高かった。 我々は簡便で迅速な遺伝子増幅検査法であるリアルタイムPCR法を用いた結核およびその他の肺炎の簡易迅速確定診断・薬剤耐性判定システムの構築とその地域医療への応用を目指している。この系が作成できれば、臨床検体採取後約2時間程度でより迅速・低コストで肺炎の鑑別診断と薬剤耐性の有無の推定が可能となり、地域の高齢化・医療過疎化の中でのより効率的な結核・肺炎コントロール対策モデル作りに繋がると考えられる。 初年度である平成25年度には主に迅速鑑別診断用のTaqManマルチプレックス・リアルタイムPCR法の系を一般市中病院の検査室に導入し、臨床検体の収集と解析を行い、地域医療における臨床診断業務に寄与すると同時に、診断系の作成のために必要な病原体サーベイランスと遺伝子配列情報の解析を行った。 次年度である平成26年度には、前年度に確立した系を用いた肺炎診断を継続し、インフルエンザウイルスのみでなくRSウイルスやヒトメタニューモウイルスなどのウイルス感染の成人肺炎における重要性に関する知見を得た。またインフルエンザ流行期における院内感染では複数の異なるインフルエンザウイルスが院内で同時に感染を引き起こしていることを発見し、インフルエンザの院内感染制御に関わる新しい知見を得た。また長崎における肺炎の重要な部分を占める結核性肺炎に対しDNAシーケンシング法を用いた迅速薬剤耐性判定システムを構築し、実臨床に用いているとともに、結核の分子疫学的なデータを集積している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である平成25年度に作成した21種類のウイルスと9種類の細菌の検出が可能な肺炎迅速鑑別診断用のTaqManマルチプレックス・リアルタイムPCR法の系と、薬剤耐性判定のためのHRM解析法 およびサイクリングプローブ法の系を用いたサーベイランスを次年度である本年度も継続し、地域医療における臨床診断業務に寄与すると同時に、病原体サーベイランスと遺伝子配列情報の解析を継続した。今年度末までに長崎県諫早市にある日 本赤十字社長崎原爆諫早病院(諫早日赤)において呼吸器感染症患者からの936検体を検査し、同時に長崎大学小児科と連携し長崎県諫早市内の小児科医院を受診した上気道炎・肺炎患児からインフォームドコンセントのもと臨床検体(鼻咽頭ぬぐい液)の提供を受け、536検体の原因微生物につい て検査を行った。現在これらの結果を解析しまとめを行っている。また、サイクリングプローブ法を用いてマイコプラズマの薬剤耐性を迅速に検出する系を作成し、リアルタイムPCR法による診断と合わせて臨床応用を行っている。 結核性肺炎に関しては、主要抗結核薬6種類(RFP, INH, SM, EMB, FLQ, PZA)の耐性に関わる計11の遺伝子領域(rpoB, embB, rpsL, rrs, ahpC, katG, inhA, kasA, gyrA, gyrB, pncA)の配列をダイレクトDNAシーケンシング法で決定し、得られた配列を結核菌薬剤耐性遺伝子変異のデータベースと照合することで結核菌の薬剤耐性の有無を予測し、得られた結果は迅速に依頼を受けた医療機関に返送するとともにデータベース化を行うシステムを確立した。年度末までに結核感染者からの79臨床検体と16の培養結核菌から抽出したDNAを用いて判定を行った。次年度も本サーベイランスを継続し、データベースをさらに充実させていく。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成27年度には、前の2年度で確立した肺炎の迅速診断系(マルチプレックス・リアルタイムPCR法)と、結核を含む肺炎の薬剤耐性迅速診断系(DNAシーケンシング法、HRM解析法、サイクリングプローブ法)の諫早日赤病院における日常臨床への応用を継続する。周辺医療機関の協力も得て、外来や病棟レベルにおける迅速確定診断や院内感染 制御への応用を目指す。また、これら簡便、安価で正確な迅速診断技術の日本全国の医療機関への紹介、さらには発展途上国における導入も模索していく。 本研究の全期間を通じて長崎県央地域の結核を含む呼吸器感染症のサーベイランスを行い、地域医療に貢献しながら、同定される病原体の微生物学的な解析を行っていく。また結核菌の新しい培養技術の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
必要試薬の一部に現時点では調達にやや時間がかかるものがあり、調整が必要であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬・消耗品費として平成27年度中に使用する。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Elevated levels of full-length and thrombin-cleaved osteopontin during acute dengue virus infection are associated with coagulation abnormalities.2014
Author(s)
Chagan-Yasutan H, Lacuesta TL, Ndhlovu LC, Oguma S, Leano PS, Telan EF, Kubo T, Morita K, Uede T, Dimaano EM, Hattori T
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Journal Title
Thrombosis research
Volume: 139
Pages: 449-454
DOI
Peer Reviewed
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