2013 Fiscal Year Research-status Report
分子生物学的研究・大規模臨床研究・統計解析の集約によるインフルエンザ治療の再評価
Project/Area Number |
25461577
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石黒 信久 北海道大学, 大学病院, 准教授 (40168216)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有賀 正 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60322806)
大庭 幸治 北海道大学, 大学病院, 講師 (30422926)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | インフルエンザ / H275Y変異 / A(H1N1)pdm09ウイルス / オセルタミビル / ザナミビル / 麻黄湯 |
Research Abstract |
目的:分子生物学的研究・大規模な臨床研究・専門的な統計解析を一つの研究室に集約することにより、小児のインフルエンザにおいて未だ評価の定まっていない治療法の再評価を行うと同時に、治療法の見直しに結びつく病態解析を行うことが本研究の目標である。 背景:(1) 麻黄湯はインフルエンザA型患者に対してノイラミニダーゼ阻害薬に劣らない効果を示すが、小児のインフルエンザB型に対する麻黄湯の有効性に関する検討は僅かである。(2) A型インフルエンザウイルスのNAにH275Y変異があるとin vitroではオセルタミビル耐性になることが知られている。2013-14年シーズンにはA(H1N1)pdm09ウイルスの4.7%よりH275Y変異が検出されているが、臨床的にオセルタミビルの効果が期待できないのか否かは不明である。(3) 成人のインフルエンザB型に対してはオセルタミビルよりもザナミビルの効果が高いとする報告が多いが、小児(5-9歳)のインフルエンザB型に対する両剤の効果に関する検討は少ない。 具体的内容:約30の協力医療機関を受診したインフルエンザ患者を対照として、前向き観察研究を行う。(1) インフルエンザB型ウイルスに感染した1-5歳の小児患者をオセルタミビル群、麻黄湯群、経過観察群の3群に分けて、来院時刻から解熱までの時間を主要評価項目として麻黄湯の有効性を評価したところ、3群間に有意差はなかった。(2) A(H1N1)pdm09ウイルスに感染した5-9歳の小児患者をオセルタミビル群、ザナミビル群の2群に分け、H275Y変異の有無による各種ノイラミニダーゼ阻害薬の有効性を検討中である。(3) インフルエンザB型ウイルスに感染した5-9歳の小児患者をオセルタミビル群、ザナミビル群の2群に分けて、内服(吸入)時刻から解熱までの時間を主要評価項目として両薬剤の有効性を評価したところ、2群間に有意差はなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1) インフルエンザB型ウイルスに感染した小児患者に対する麻黄湯の有効性:B型インフルエンザに罹患した1-5歳児をオセルタミビル群、麻黄湯群、経過観察群に分け、来院時刻から解熱までの時間を主要評価項目として麻黄湯の有効性を評価した。オセルタミビル群125名、麻黄湯群18名、経過観察群15名のデータが集積され、来院時刻から解熱までの時間は各々53.5±2.8時間、65.0±9.1時間、49.1±7.3時間となった。麻黄湯を使用した患者数が18例と不十分である。 (2) H275Y変異のあるA(H1N1)pdm09ウイルスに感染した小児患者に対するノイラミニダーゼ阻害薬の有効性:A型インフルエンザに罹患した5-9歳児をオセルタミビル群、ザナミビル群に分け、内服(吸入)から解熱までの時間を主要評価項目として評価した。オセルタミビル群28名、ザナミビル群53名のデータが集積され、現在、H275Y変異の解析を行っている。H275Y変異の有無を問わなければ、オセルタミビル群における内服から解熱までの時間は28.3±4.0時間、ザナミビル群における吸入から解熱までの時間は32.5±3.3時間となり、Log-rank検定ではp=0.349と有意差はなかった。計画立案時には想定しなかったテーマであるが、概ね順調である。 (3) インフルエンザB型ウイルスに感染した小児患者に対するノイラミニダーゼ阻害薬の有効性:B型インフルエンザに罹患した5-9歳児をオセルタミビル群、ザナミビル群に分け、内服(吸入)から解熱までの時間を主要評価項目として評価した。オセルタミビル群113名、ザナミビル群234名のデータが集積され、オセルタミビル群における内服から解熱までの時間は49.9±3.0時間、ザナミビル群における吸入から解熱までの時間は46.1±3.5時間となり、Log-rank検定ではp=0.109と有意差はなかった。概ね順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1) インフルエンザB型ウイルスに感染した小児患者に対する麻黄湯の有効性:2013-14年シーズン、麻黄湯を使用した患者数が18例と不十分であった。2014-15年シーズンも本プロジェクトを継続して、麻黄湯使用患者を増やす予定である。 (2) インフルエンザB型ウイルスの遺伝子解析:インフルエンザB型ウイルスには、そのHA抗原性の違いからビクトリア系統株と山形系統株とが存在し、遺伝子解析により両者を区別することが可能である。B型インフルエンザに対する治療効果に関する過去の検討において、インフルエンザB型ウイルスを両系統株に分けて論じた報告はない。そこで、我々が回収したインフルエンザB型ウイルスをビクトリア系統株と山形系統株とに分けた上で、治療に対する反応性を検討する予定である。 (3) 小児のH275Y変異のあるA(H1N1)pdm09ウイルスに感染した小児患者に対する各種ノイラミニダーゼ阻害薬の有効性:2013-14年シーズンにはオセルタミビル、ザナミビル以外のノイラミニダーゼ阻害薬、即ち、ペラミビルとラニナミビルについても同様の検討を行う予定である。 (4) ラニナミビル使用後の耐性ウイルスの出現に関する研究:2011-12年シーズンに約650名のインフルエンザ患者を対象にザナミビルとラニナミビルの効果を検討したところ、ラニナミビル投与群では2峰性発熱の頻度が有意に高いことが明らかとなった。ラニナミビル使用後に2峰性発熱を起こした患者では耐性ウイルスが発生した可能性がある。そこで、ラニナミビルを使用した患者の咽頭ぬぐい液を採取してウイルスの遺伝子変異を検索し、治療開始から解熱までの時間との関係を評価する。 (5) ノイラミニダーゼ阻害薬の治療下における炎症性サイトカインの変動:インフルエンザ入院患者の入院時と退院時、2峰性発熱をおこした時の血清中の各種炎症性サイトカイン(RANTES, IFN-γなど)濃度を測定して、患者の熱型との関連を解析する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
小児のインフルエンザB型に対する麻黄湯の有効性に関する研究に関しては、当初1000名を目標として計画を立てた。しかしながら、麻黄湯を使用する患者が少なく、200名弱に留まったために、当初計画した予算を使い切ることはなかった。加えて、H275Y変異のあるA(H1N1)pdm09ウイルスの増加が問題となったのは、2013-14年のインフルエンザ流行中のことであり、本計画の立案時には想定されていなかった。 インフルエンザB型ウイルスに感染した小児患者に対する麻黄湯の有効性に関する研究、および小児のH275Y変異のあるA(H1N1)pdm09ウイルスに感染した小児患者に対する各種ノイラミニダーゼ阻害薬の有効性に関する研究、共に症例数を増やして検討を加える必要がある。2013年度から2014年度に繰り越しとなった予算は、2013-2014年シーズンに収集した検体の遺伝子解析と2014-2015年のインフルエンザ流行期の検体収集および解析のために用いる予定である。
|
Research Products
(10 results)
-
-
-
-
[Journal Article] Disease-free survival as a surrogate for overall survival in adjuvant trials of gastric cancer: a meta-analysis2013
Author(s)
Oba, K. Paoletti, X. Alberts, S. Bang, Y. J. Benedetti, J. Bleiberg, H. Catalano, P. Lordick, F. Michiels, S. Morita, S. Ohashi, Y. Pignon, J. P. Rougier, P. Sasako, M. Sakamoto, J. Sargent, D. Shitara, K. Cutsem, E. V. Buyse, M. Burzykowski, T. Gastric group
-
Journal Title
Journal of the National Cancer Institute
Volume: 105
Pages: 1600-1607
DOI
-
-
-
-
-
-