2015 Fiscal Year Research-status Report
精神神経病変と色素異常症発症に共通のmTORを介したオートファジー機構の解明
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25461690
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金田 眞理 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70397644)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オートファジー / mTOR / 結節性硬化症 / 色素異常 / 中枢神経症状 / メラノソームの形成 / 自閉症 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内には小胞形成と呼ばれる普遍的な膜輸送の機構がある。オートファジーもこの1つで、細胞内成分をリソソームへ運び込み分解する細胞内分解システムであり、mTORによって調節されている。オートファジーと同様の小胞形成のメカニズムは蛋白の郵送、取り込み排泄のクリティカルな機構で、メラノサイトにおけるメラノソームの形成、中枢神経系や神経シナップスにおける神経伝達物質の郵送、などにもこの機構が関与している。ところで、ヒトにおいて、色素異常と中枢神経症状が同時におこる、一連の疾患がある。結節性硬化症、伊藤白斑、レギウス症候群、Linear and whorked nevoid nypermelanosis 、などがこれに当たる。これらの疾患では、前述した共通の機構で、中枢神経系におけるオートファジー機構の破綻が中枢神経症状を、メラノサイトにおけるメラノソームの形成異常が色素異常をひきおこし、結果として色素異常と中枢神経症状が同一の疾患で起こってくると考えた。 結節性硬化症(TSC)はTSC1/TSC2遺伝子の異常の結果下流のmTORの恒常的な活性化がおこり、全身に白斑と精神発達遅滞、自閉症、てんかんなどの中枢神経症状を呈する疾患である。そこでこのTSCをモデルとして、中枢神経症状と白斑の共通の機序の解析を試みた。最近TSCの自閉症をが、mTORC1の阻害剤で発症が抑えられることまた、本症のCortical tuber 部ではオートファジーの重要因子であるLC3の低下が見られることが報告された。そこで、われわれは、TSCの白班においても、オートファジーの異常が原因でおこっている事を確認し、TSCの神経病変と白斑の共通の機序の解明を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
モデルマウスでは白班が出現しないので、まずSiTSCノックダウンメラノサイトを作製し、このTSCのモデルメラノサイトを用いてTSCにおける白斑形成の機序を検討した。TSCのモデルメラノサイトでは、p-MTOR2448やその下流のp-70S6Kの発現が増加し、メラニン産生の低下がおこっている事。色素産生に関わる遺伝子MITF, TYR, PMEL, MELAN-Aの低下がおこっている事。さらに、オートファジーのマーカーであるLC3、P62の低下がおこっている事をwestern、RT-PCR、組織染色で確認した。さらに、電子顕微鏡による観察を用いて、TSCモデルメラノサイトでは、成熟メラノソームは存在するが、1,2段階のメラのソームの減少、消失が著明でメラのソームの形成過程の初期において、メラのソームの形成が障害されている可能性をみつけだし、しかも、これらメラのソームの形成異常はsirolimusの投与で回復し、mTORの活性化がこのメラのソーム活性化異常の原因の1つである事を確認した。 ついで、我々はTSC患者の白班が同様の機序でおこっている事を確認した。mTORの阻害剤であるsirolimusの局所投与でTSCの白班がほぼ完全に消失する事。さらに、sirolimusの局所投与前後のTSCの白班の組織像を電顕、光顕で比較検討する事により、細胞実験で認められたのと同様の結果、すなわち、TSCの白斑ではメラノサイトが存在するがメラニン形成過程の初期における異常があり、これがsirolimusの局所投与で回復する事を示した。 mTORやMITFなどは普遍的な遺伝子であり、これら遺伝子を完全にノックアウトしてしまうと生存し得ない。そこで、これら遺伝子の皮膚や脳におけるconditional-KOマウスを作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、TSCの自閉症やてんかんなどの中枢神経症状にも色素細胞で認められたのと同様の機序が関係している事を示す為に、自閉症を発症するTSCのモデルマウスの脳組織をp-MTOR2448、p-70S6K、LC3、P62、カルモジュリン、カルシニューリン、Aキナーゼアンカタンパク質(AKAP)、カルモジュリン依存性プロテインキナーゼⅡ(CaMKⅡ) などのリン酸化抗体やSNARE蛋白やシナップトタグミなどに対する抗体を用いて染色し、コントロールマウスの脳組織の染色像との比較検討を行う。さらに、神経細胞における同様の機序を調べるために、前年度までに作製した、SiTSCノックダウンアストロサイトを用いて、western、RT-PCR、組織染色、電子顕微鏡による観察を用いて、それらの発現の変化を確認し色素細胞と同様の機序がTSCにおける神経症状の原因になっている事を確認する。 さらに、前年度までにつくってきた、TSCの皮膚や脳におけるconditional-KOマウスを完成させ、それらの臨床症状の発現と同時に脳や皮膚の組織レベルにおける神経伝達実関与する因子や、メラのソーム産生に関与する因子の検討を行う。
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Causes of Carryover |
年度内に本研究の結果について論文の投稿を試みたが、追加実験を求められた。これらの実験を遂行するために、MITFやGFAP等に特異的なTSC1,2 のConditional-KO mouseを作製し、皮膚や神経系における異常を検索する必要が生じた。これら Conditional-KO mouseの作製に時間がかかり、次年度に実験と実験施行に必要な予算が繰り越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額は、マウスの維持、ならびにマウスの皮膚や脳組織の組織染色やwestern blotting, real time PCR施行のとめの抗体などの費用に使用予定
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] An immune pathological and ultrastructural skin analysis for rhododenol-induced leukoderma patients2015
Author(s)
Tanemura A, Yang L, Yang F, Nagata Y, Wataya-Kaneda M, Fukai K, Tsuruta D, Ohe R, Yamakawa M, Suzuki T, Katayama I
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Journal Title
J Dermatol Sci
Volume: 77
Pages: 185-8
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Mutation analyses of patients with dyschromatosis symmetrica hereditaria: Ten novel mutations of the ADAR1 gene2015
Author(s)
Okamura K, Abe Y, Fukai K, Tsuruta D, Suga Y, Nakamura M, Funasaka Y, Oka M, Suzuki N, Wataya-Kaneda M, Seishima M, Hozumi Y, Kawaguchi M, Suzuki T
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Journal Title
J Dermatol Sci
Volume: 88-90
Pages: 88-90
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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