2013 Fiscal Year Research-status Report
膵星細胞を介したマトリックス・リモデリングによる膵癌治療の新展開
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25462117
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮坂 義浩 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40507795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 雅夫 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30163570)
仲田 興平 九州大学, 大学病院, 助教 (30419569)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 膵癌 / 膵星細胞 / 細胞外マトリックス / 線維構築 |
Research Abstract |
膵癌は、他の固形癌より間質の線維増生を強く認めるため、癌の悪性度や治療抵抗性における癌微小環境の重要性が以前より指摘されている。癌微小環境が、癌細胞の増殖、浸潤、転移、抗癌剤治療耐性に強い影響を及ぼすことが報告されており、膵癌微小環境も治療標的とすることで、最難治癌である膵癌の治療成績の改善を図る戦略が期待されている。本研究では、癌微小環境形成メカニズムを詳細に検討する中で、線維増生の形成主体である膵星細胞と、細胞外マトリックスの線維配列に着目した。 まず我々はヒト膵癌切除組織より樹立した膵星細胞から三次元細胞外マトリックスを作成した。三次元細胞外マトリックスは、フィブロネクチンやI型コラーゲンを豊富に有した。また、その線維配列を解析すると、作成する際の細胞数が多いほど平行な線維の割合が増加することが判明した。作成した三次元細胞外マトリックス上で癌細胞を培養すると、膵癌細胞株の形態はフィブロネクチンやI型コラーゲンをコートしたディッシュ上の細胞と比較して紡錘形となった。また、有意なビメンチンの発現増加、E-カドヘリンの発現低下を認め、三次元細胞外マトリックスは癌細胞の上皮間葉転換を促進することが判明した。次に、三次元細胞外マトリックス上での癌細胞の運動能を評価した。平行な線維の割合が多いマトリックス上での経時的観察を行うと、癌細胞は線維の方向とほぼ同じ方向に、直線的に運動することが判明した。以上のことより、膵癌細胞の高い浸潤能や浸潤方向における膵星細胞由来細胞外マトリックスの重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト切除組織由来膵星細胞から三次元細胞外マトリックスを作成することに成功し、その線維構築の評価方法も確立したこと、さらに作成した三次元細胞外マトリックスを使用して、癌細胞と細胞外マトリックスの相互作用も検討し、一定の成果を得られたことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられた。また、膵星細胞におけるCD90発現と活性型膵星細胞の指標となるα-SMA発現が予後と相関することを見出した。一方、本年度の計画で予定していた膵星細胞のサブタイプによる三次元細胞外マトリックスの質的評価まで行うことはできなかった。また、三次元細胞外マトリックスの硬度の評価を行うこともできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、膵星細胞のフェノタイプの違いによって、産生・構築される細胞外マトリックスの違いについて検討する予定である。また、線維を構築する上での分子メカニズムについても検討を重ねたい。得られた知見から、膵癌間質の線維構築を制御する標的分子を同定し、膵癌マウスモデルで膵星細胞をターゲットとした間質標的治療の有効性を検討していく予定である。線維構築の検討で十分な結果が得られなければ、当初計画に記した細胞外マトリックスの硬度に関する評価を行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究はおおむね順調に進展しており効率的に資金を使用できたため。 試薬類30万円、抗体10万円、リボ核酸干渉・遺伝子強制発現50万円、実験用マウス60万円、実験用ガラス器具25万円 研究成果発表費 10万円、論文投稿料10万円
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Research Products
(3 results)