2013 Fiscal Year Research-status Report
脳血管攣縮のシグナル伝達-Rho-kinaseのラフトへの細胞内転位置-
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25462218
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
白尾 敏之 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70448281)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ラフト / カベオラ / コレステロール / Rho-kinase |
Research Abstract |
正常ラット群、高脂血症ラット群、コレステロール除去剤投与ラット群から採取した血管平滑筋細胞(内頚動脈)の外膜を丁寧に剥離・除去した検体を作成した。各検体に対してFlotillin-1(ラフトの一次抗体)とCaveolin-1(カベオラの一次抗体)を用いたwestern blottingにてラフトとカベオラの発現を確認したところ、高脂血症群のFlotillin-1とCaveolin-1の発現量は他の2群と比較して優位に上昇していた。また、各検体から全RNA を抽出し、逆転写試薬を用いてcDNAを合成した後にTaqManプローベを用いてラットFlotillin-1(ラフトマーカー)、Caveolin-1(カベオラマーカー)についてPCR定量解析を行ったところ、高脂血症群のFlotillin-1とCaveolin-1のmRNAレベルも他の2群と比較して優位に上昇していた。 申請者らは既にラットを使用した実験で、①高脂血症が血管平滑筋の総コレステロール濃度を上昇させ、②コレステロールの除去が高脂血症における血管平滑筋の総コレステロール濃度の上昇を抑制する結果を得ている。したがって、上記のwestern blottingの結果 から、血管平滑筋の総コレステロール濃度の変化がラフトやカベオラの発現を誘導している可能性が示唆された。また、上記PCR定量解析の結果から、 血管平滑筋の総コレステロール濃度の変化というシグナルが核に伝達されラフトとカベオラの発現を制御するメカニズムの存在も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の目標であった①正常ラット、高脂血症ラット、コレステロール除去剤投与ラットの血管平滑筋細胞におけるラフトとカベオラの発現のwestern blottingによる検討、②PCR 定量解析よるコレステロールの負荷や除去によるラフトとカベオラの発現の変化のmRNAレベルでの検討、③正常ラット、高脂血症ラット、コレステロール除去剤投与ラットの内頚動脈へのSPC刺激が引き起こすRho-kinase活性化のELISA 法による検討のうち、最初の2つについては解析が完了したが、③の解析に予定よりも時間を要したため、③の検討には至らなかったことから、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1) SDラット(5週)を通常の餌(F1飼料)で飼育したコントロール群、高コレステロール食(F1飼料+1%コレステロール+1%コール酸)で飼育した高コレステロール群、コレステロール除去剤を5%添加した高コレステロール食で飼育したコレステロール除去群に分ける。各餌は10週間投与する。2)各群のラットを用い、全身麻酔・人工呼吸管理下に内頚動脈を採取し、内頚動脈の外膜を丁寧に剥離・除去する。3) 上記2)の検体に対してSPC刺激を加え、リン酸化MBS(Thr696) モノクローナル抗体を用いたELISA 法により、Rho-kinase ファミリーの活性を測定する。SPC刺激を行わない検体の結果を基準としてデータを算出する。 MBS: Myosin-Binding Subunit of myosin phosphatase 次に、4) 上記2)の検体に対してショ糖密度勾配遠心法を用いて血管平滑筋組織の膜ラフトを精製し、11フラクションを分取する。5) 上記4)の試料に対して、Flotillin-1とCaveolin-1を用いたwestern blottingにてラフトとカベオラの存在するフラクションを確認する。6) 上記4)で得られたフラクションに対して、ROCK2(Rho-kinaseの一次抗体)を用いたwestern blottingを行い、Rho-kinaseの分布を確認する。7) 上記2)の検体に対してSPC刺激を加え、上記4) ~6) と同様の操作を行いSPC刺激によるRho-kinaseの各フラクションへの分布の変化を検討する。 Rho-kinaseは細胞膜への細胞内転位置によって情報を伝達すると考えられている。SPC刺激後にRho-kinaseの分布がラフトとカベオラの存在するフラクションへ移動することをwestern blottingを用いて検討することで、SPC-Rho-kinase系が引き起こす血管攣縮機構ではRho-kinaseのラフトやカベオラへの細胞内転位置によってシグナルが伝達されることを解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた実験内容のうち、攣縮因子(SPC)を加えた状態でRho-kinaseの活性化を検討するwestern blottingの実験が施行できておらず、実験に用いるラット、試薬などの消耗品の購入を次年度に見送ったため、未使用額が生じた。 未使用額については次年度の研究費と合わせてwestern blottingの実験に用いるラット、試薬などの消耗品の購入費に充てる。
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