2013 Fiscal Year Research-status Report
蛍光試薬5-アミノレブリン酸の放射線増感作用を悪性脳腫瘍治療へ応用する
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25462282
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
山本 淳考 産業医科大学, 医学部, 准教授 (80461565)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | glioma / 5-ALA / Iba-1 / CD68 / macrophage / necrosis / microdensitometry / radiotherapy |
Research Abstract |
われわれは、従来より悪性グリオーマ細胞株を使用し、5-アミノレブリン酸(5-ALA)の放射線増感作用についてin vitroにて検証を行ってきた。本年度は、主にラット皮下腫瘍モデルを使用したin vivoでの追試を行い、さらに病理学的検討を行った。放射線照射を行った群では、未治療群と比較して有意に腫瘍増殖抑制を示すが、5-ALAを前投与し放射線照射することで、放射線単独よりもさらに腫瘍増殖抑制効果を示した。興味深いことに、5-ALAのみ投与した際に未治療群と比較して腫瘍増殖抑制効果を示した。このことは、5-ALAそのものにも何らかの抗腫瘍効果を呈することが示唆される。治療終了後の皮下腫瘍を病理学的に検証をした。いずれの群もHE染色にて腫瘍内部に壊死性変化を有しているが、活性型マクロファージの指標となるIba-1およびCD68を使用した免疫染色を行った。未治療群においては、Iba-1陽性細胞の集簇はほとんど認めなかったが、放射線治療群においては、腫瘍表面にIba-1陽性細胞の強い集簇を認めさらに、腫瘍内部にも多く認めていたが、5-ALAで前処理後の放射線治療群ではさらにその傾向が強いことが分かった。これらの病理所見から、腫瘍断面積におけるIba-1陽性細胞率をmicrodensitometry法にて定量的に評価をすると、5-ALAでの前処理後の放射線照射を行った群が、他群と比較し有意にIba-1陽性細胞の集簇が高いことが証明された。さらに、興味深いことに、5-ALAのみを投与した群においてもわずかにIba-1陽性細胞の集簇を認めた。Iba-1陽性細胞は、腫瘍内部においては、壊死と腫瘍細胞との境界に集簇する傾向があり、貪食像が多数確認された。CD68についてもほぼ同様の結果が得られた。これらの実験で、5-ALAが宿主に対して何らかの抗腫瘍免疫に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究予定は、悪性グリオーマ細胞株を用いた放射線照射による5-ALAより誘導される細胞内プロトポルフィリン代謝および活性酸素種の測定を行う予定であった。しかし、ラット皮下腫瘍モデルを使用した実験で、病理学的評価を行っていく上で、担癌動物に対する抗腫瘍免疫に5-ALAが強く関与することが偶然発見された。これは、5-ALAの放射線増感作用のメカニズムの一つとして極めて重要な現象であり、まずこのことの証明に本年度は重点を置いた。そのため、前述の実験が施行できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、前述の細胞内ポルフィリン代謝および活性酸素種の測定を行う前段階として、フローサイトメーターを使用して、種々の悪性グリオーマ細胞株における5-ALAから誘導される細胞内プロトポルフィリンの測定を開始している。交付申請書に記載した研究計画に従い、実験を推進していく予定である。
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