2015 Fiscal Year Research-status Report
蛍光試薬5-アミノレブリン酸の放射線増感作用を悪性脳腫瘍治療へ応用する
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25462282
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
山本 淳考 産業医科大学, 医学部, 准教授 (80461565)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 活性酸素種 / グリオーマ / 放射線治療 / 5-ALA / プロトポルフィリンIX / フローサイトメトリー / 脳腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、悪性グリオーマ細胞株を使用し、5-アミノレブリン酸(5-ALA)の放射線増感作用について、放射線照射後、遅発性に発生する活性酸素種にターゲットをおいて検討した。その結果、5-ALAで前処理した細胞株においては、放射線照射12時間後に発生する活性酸素は、未処理の群に加えて有意に増加していることが判明し、さらに、それらの活性酸素種は、細胞質を中心に増加していた。過去の研究から、悪性グリオーマ細胞において、5-ALAが有意にプロポルフィリンIX (PpIX)を蓄積している。また、今までのわれわれの研究からこのPpIXの産生量の違いから、放射線増感作用が異なること、さらに、放射線直後の活性酸素種の産生分布が、PpIXに一致していることを考慮し、5-ALAの放射線増感作用は、誘導されるPpIXが重要な働きをしていると推測される。 では、放射線増感作用をさらに向上するためには、5-ALAを処理した際に、いかにPpIX蓄積量を増加できるかが重要となる。そこで、本年度は、すでに市販されている薬剤および試薬を使用し、5-ALAと併用して処理した悪性グリオーマ細胞株におけるPpIX産生量の違いについて、フローサイトメーターを使用し測定した。使用した市販薬剤・試薬は、抗てんかん薬、スタチン、降圧剤、利尿剤、消炎鎮痛剤、抗生物質(ニューキノロン)等、合計23種類について検討した。コントロールと比べて、特にPpIXの増加がみられたのは、ニューキノロン系抗生物質であった。細胞株間で違いがあるが、ニューキノロン系薬剤の中で特に、シプロフロキサシンが悪性グリオーマ細胞株において、5-ALAから誘導されるPpIXの産生増加に寄与していることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、悪性グリオーマ細胞株において5-ALAの放射線増感作用のメカニズムとして、遅発性に発生する活性酸素種の増加に関与していることが判明した。5-ALAから誘導されるPpIXがその増加に密接に関連していることが推測されるために、本年度は、このPpIXの蓄積量を変化する物質同定するために時間を必要とした。現時点では、おおむね順調に進展しているが、さらに5-ALAの放射線増感のメカニズムの解明が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究で、シプロフロキサシンが、5-ALAから誘導されるPpIXを増加することが判明した。理論的には、PpIX蓄積量が増加すれば、それだけ放射線増感作用が増強されることが推測される。まず、シプロフロキサシンと5-ALAを併用した際の放射線増感作用について、悪性グリオーマ細胞株を使用し、コロニー生成法で評価したい。さらに、これら併用した際の、放射線照射後の遅発性活性酸素種産生量について、フローサイトメトリーを使用し定量的に評価を行い、シプロフロキサシンの影響を検討する。さらに、5-ALAから誘導されるPpIXがミトコンドリア内部に蓄積することから、これらの現象は、ミトコンドリアを中心としてその細胞伝達が行われていることが推測される。そのため、実験計画書に従い、ミトコンドリアの放射線照射後の変化(ミトコンドリア量、電子伝達系)を検討する
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