2013 Fiscal Year Research-status Report
腰部脊柱管狭窄症における黄色靭帯肥厚メカニズムの解明
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25462310
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
西良 浩一 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (10304528)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 令 日本医科大学, 医学部, 准教授 (70398866)
酒井 紀典 徳島大学, 大学病院, 助教 (80403731)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 腰部脊柱管狭窄症 / 黄色靭帯 / 腰椎 / 肥厚性瘢痕 |
Research Abstract |
我々は、腰部脊柱管狭窄症患者から得られた肥厚黄色靭帯と若年者腰椎椎間板ヘルニアの手術より得られた肥厚の無い黄色靭帯を組織学的に比較検討した(Sairyo et al. SPINE 2005)。結果、肥厚靭帯では、正常弾性線維が減少し、コラーゲンに置き換わり線維化・瘢痕化が進行していることが分かった。その変化は、靭帯内の脊髄神経に近い腹側部分では顕著ではなく、背側に著しいことが明らかとなった。背側の瘢痕化は肥厚が強くなるほど顕著であり、肥厚の原因として靭帯内の背側部分への瘢痕の蓄積であることが示された。胎児の黄色靭帯にはほぼ正常の弾性線維で占められ瘢痕形成がみられないことも確認した(Kosaka et al. SPINE 2007)。背側に瘢痕化が著しい原因を、脊椎有限要素3次元モデルを使用して解析したところ、脊椎運動時、腹側に比べ背側では約5倍の応力が生じていることが示された(Sairyo et al. SPINE 2005)。また、肥厚靭帯のマイクロアレイによる発現遺伝子の網羅的解析により(Sairyo et al. SPINE 2007)、靭帯内炎症性サイトカインの発現を見出し、特にCOX-2に関しては免疫染色でも確認した。これらの検討から次の如き仮説が得られた。 靭帯肥厚は若年者には見られず、加齢とともにみられることより、靭帯の加齢に伴う変化が考えられる。瘢痕化に関与するする因子として、① 弾性力の低下に伴う易損傷性があげられる。② 伸張性の乏しい靭帯に伸張負荷が加わり損傷が生じる。③ 炎症性サイトカインによる線維化・瘢痕形成がもたらされる。④ 背側に繰り返される瘢痕形成の蓄積により肥厚がもたらされる。従って、本病態は、皮膚の創傷治癒過程に生じる、肥厚性瘢痕やケロイドに代表される線維増殖性疾患(fibroproliferative disorder: FPD)の類似疾患と仮説を立てている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年11月1日に帝京大学から徳島大学に異動しました。それに伴い、研究環境が変化し、徳島大学での研究室の微調整を行っております。担当の大学院生も決まりましたので、本年度、ペースが戻るものと確信いたしております。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫染色による解析: I型およびIII型コラーゲン、α-SMAを染色し、黄色靭帯内における瘢痕蓄積分布を解析する。さらに瘢痕蓄積のメカニズムとして、各種Matrix metalloproteinaseおよびTissue inhibitor of metalloproteinaseの産生分布を解析し肥厚靭帯内の瘢痕蓄積における役割を解析する。また、若年層から得られた靭帯をコントロールとし、高齢者におけるこれらの特徴を検討する。 背側瘢痕層における機械受容シグナル伝達経路の解析: 手術時に得られた肥厚黄色靭帯をサンプルとして使用する。背側30%の瘢痕成分靭帯サンプルと、腹側30%の正常靭帯サンプルを比較検討する。肥厚の著しい5人の腰部脊柱管狭窄症の靭帯を調査する。得られた靭帯は液体窒素で急速凍結する。トライゾールにて組織を保存し、全RNAを抽出する。そのRNAを元にcDNAマイクロアレイ法を用いて、背側と腹側の発現遺伝子を網羅的に解析し、強発現・弱発現の遺伝子をスクリーニングする。その候補遺伝子を元に、バイオインフォマティクスの手法を用い、シグナル伝達経路解析を行う。活性化している、あるいは非活性化しているシグナル伝達系路を解析し、どのシグナル伝達に異常が生じているかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
帝京大学から徳島大学への異動により、一時的に研究が止まった為。平成26年度から引き続き研究を行う予定。 背側瘢痕における機械受容シグナル伝達経路(Mechanosignaling Pathway)の解析:分担研究者小川がケロ イドと正常皮膚に対して行った方法を黄色靭帯に応用する。尚、次年度使用額については上記研究計画にかかる消耗品に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)