2013 Fiscal Year Research-status Report
損傷脊髄の再髄鞘形成に対するアミロライドの効果(小胞体ストレス応答能増強による)
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25462311
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
渡辺 雅彦 東海大学, 医学部, 教授 (40220925)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
隅山 香織 東海大学, 医学部, 講師 (20433914)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / 小胞体ストレス応答 / オリゴデンドロサイト / オリゴデンドロサイト前駆細胞 / アポトーシス / 2次損傷 |
Research Abstract |
損傷脊髄において、再髄鞘形成に関わるオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)は活発に増殖するが、分化することなく多くが細胞死へ至るとされている。我々は小胞体ストレス誘導性アポトーシスに着目し、利尿薬であるアミロライドによる小胞体ストレス応答能の増強、グリア細胞のアポトーシス抑制および後肢運動機能障害の軽減を証明した。本研究では、アミロライド投与で生存したオリゴデンドロサイトが、再髄鞘形成や後肢感覚機能障害の軽減にも影響しているかどうかを長期的観察にて検討した。 脊髄圧挫損傷モデルラットを作成し、アミロライド投与群(A群)、PBS投与群(C群)の2群に分け、損傷24時間後より14日まで各10mg/kg/dayを腹腔内投与した。各群に対し損傷後の細胞分裂のtracingを目的として、損傷後3日間12時間毎にBrdU(50mg/kg/回)を腹腔内投与した。後肢運動機能評価としてBBBscore(n=14)、疼痛関連行動評価としてvon Frey test(n=5)を用いて測定した。オリゴデンドロサイトの生存・分化をBrdU+NG2(OPC)、BrdU+APC(オリゴデンドロサイト)の二重免疫染色を用いて、免疫組織学的に評価した(n=3)。髄鞘形成の評価として、Western blotting(myelin basic protein:MBP、n=5)を行い、2群間で比較し統計学的評価を行った。 BBBscoreでは損傷後17日目以降において有意にA群で高く(損傷後17日,p<0.05)、それは観察期間中継続して認めた(損傷後56日,p<0.01)。von Frey testでは、損傷後14日においてC群と比較し、A群で有意に刺激反応時間の増加を認め、痛覚過敏の改善を認めた(p<0.05)。免疫染色では損傷後14日でA群はC群と比較してBrdU陽性NG2陽性細胞は有意に高値であった(p<0.05)。損傷後56日でA群においてC群と比較し、BrdU陽性APC陽性細胞は有意に高値であった(p<0.05)。Western blottingにてMBPは、損傷後14日、28日、56日においてC群と比較し、A群で有意に高かった(p<0.05)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、初年度BrdU+NG2、BrdU+APCの二重染色による免疫組織学的評価を行うことを主実験として計画していた。評価のtime pointとして損傷後7日、14日、28日、56日での評価を行う予定であったが、モデルラットの作成や実験手技の獲得、サンプル作成に時間を費やし、すべてのtime pointでの評価を行うことはできなかった。しかし上記のごとく、損傷後14日でのBrdU+NG2陽性細胞数の比較や損傷後56日でのBrdU+APC陽性細胞の比較により二次傷害によるOPCのアポトーシスを抑制し、生存したOPCが成熟オリゴデンドロサイトへ分化している可能性が示唆された。また、並行してWestern blottingによるMBPの評価を行い、A群で有意に高値を認めた。これは二次傷害による髄鞘の破壊を抑制し、さらには生存、分化したオリゴデンドロサイトによる再髄鞘形成の可能性も示唆された。そして、BBBscoreやvon Frey testで後肢運動・感覚機能の改善を認めた。これは再髄鞘形成による神経経路の修復の効果と考える。 実験計画の内容は初年度、次年度の計画が一部前後しているが、概ね当初の計画通り進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
①免疫染色 APC+BrdU、NG2+BrdUの二重染色にて損傷後7,14,28,56日でカウントしOPC,オリゴデンドロサイト数の推移をみる。評価するtime point、サンプル数を増やし、オリゴデンドロサイト系の細胞生存・分化を経時的に評価する。 ②電子顕微鏡 本年度もサンプルを作成し、電子顕微鏡での観察を行ったが、固定方法が確立せず評価を行える結果を得ることができなかった。次年度は固定法を含め再検討し、縦切片のサンプルを用い、トルイジンブルー染色で損傷脊髄の範囲を確認する。損傷範囲を、計算ソフトを用いて評価しA群、C群で比較する。また、電子顕微鏡で損傷周囲の拡大像を捉え、髄鞘の損傷程度や髄鞘形成を確認する。 ③小胞体ストレス誘導性アポトーシスの抑制の他にオリゴデンドロサイトの分化過程にアミロライドが作用しているかどうかを確認する。正常脊髄においてオリゴデンドロサイト分化の促進因子(Sox10,MRF,Sip1,Nkx2.2,Olig1)や抑制因子(PDGFA/PDGFRα,Lingo-1)が関与していることが報告されている。これらの因子をRT-PCRやWetern blottingを用いて遺伝子・蛋白レベルでの変化を評価しアミロライドのオリゴデンドロサイト系細胞の分化への影響を比較する実験を検討している。
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