2013 Fiscal Year Research-status Report
NF-kB抑制分子を介した関節リウマチ由来滑膜線維芽細胞のTNF応答増幅機構
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25462390
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
五十嵐 英哉 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (40291538)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 関節リウマチ / ABIN / TNFR2 / TNFα / DNAチップ |
Research Abstract |
Episomal型哺乳動物細胞発現ベクターpEBmulti-HygにTNFR2の全長cDNA、及びABIN-3とGFPの融合タンパク(ABIN-3/GFP)をコードするcDNA、GFPのみのcDNAをクローニングし、関節リウマチ由来ヒト滑膜線維芽細胞株MH7Aにリポフェクション法で遺伝子導入後、ハイグロマイシンを含む培養液で選択を行い、TNFR2、ABIN-3/GFP、GFPそれぞれを過剰発現する形質安定細胞株を得た。TNFR2安定株の対照としてベクターのみのMock安定株も同時に樹立した。ABIN-3/GFP安定株は対照のGFP安定株に比べて増殖速度が遅く、胞体が伸びて細胞サイズが増加するなど、明らかにフェノタイプの変化を示した。さらに通常培養中にプラスチック底面より剥離した、おそらく細胞死に陥ったものが多く認められた。そこでABIN-3/GFP安定株と対照GFP安定株との間でDNAチップ(3Dアレイ、東レ)による差次的遺伝子発現解析を行ったところ、関節リウマチ増悪因子、細胞骨格、サイトカインレセプター、脱水化酵素、癌転移、等に関連する遺伝子発現に量的差違が認められ、リアルタイムPCRにて再現性を確認した。関節リウマチ増悪因子に関して、その発現制御に関与するシグナル伝達分子を探索したところ、ABIN-3/GFP安定株ではこの経路上にあるキナーゼの活性低下が示されたが、ABIN-3がこのシグナル経路に関わるとの報告はなく、新たな制御機構の存在が示唆された。 また大変興味深いことに、これらの細胞株をTNFαで刺激するとTNFR2安定株およびABIN-3/GFP安定株ではアネキシンV陽性細胞が増加し、アポトーシス感受性が増加するという同じフェノタイプを示すことがわかり、TNFR2を介するアポトーシス促進シグナル経路とABIN-3との密接な関係が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画調書に則り、DNAチップによる差自的遺伝子発現解析を行い、「研究実績の概要」に記載したように、リウマチ関連因子の新たな制御機構の存在を示唆する候補遺伝子群を得ることが出来た。 またTNFR2過剰発現形質安定細胞株を樹立し、この細胞株を用いて関節リウマチ由来滑膜線維芽細胞におけるTNFR2シグナル伝達経路の解析に関しては、下流のシグナル伝達分子であるTRAF1、TRAF2の発現解析とNF-κB、MAPKのリン酸化シグナルカスケードの検討を、またこの細胞株でのTNFα刺激による細胞死の亢進については、Annexin V染色とCaspase-8の活性化を指標に、その機序について解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
NF-κB抑制分子であるABIN-3による新たな制御機構の存在が示唆されたリウマチ関連因子発現に関わるシグナル伝達経路の詳細な解析を進める。またTNFR2過剰発現細胞と共通する現象として認められたTNFα刺激後の細胞死の増加について、アポトーシスのみならず、プログラムネクローシス(ネクロトーシス)も考慮に入れた細胞死誘導メカニズムについての解析も同時に進める。 次年度で行うプロテオミクスによるABIN associated moleculesの探索については、予備実験として免疫沈降後一次元電気泳動の銀染色において200 kDa、30 kDaのところにコントロールレーンには認められないバンドを検出したが、現在細胞内ケミカルクロスリンク法により会合タンパクをより効率よく共沈させることができないか条件を検討中である。免疫沈降物の二次元電気泳動は予備実験できれいな銀染色像を得ることが出来ておらず、原因は等電点電気泳動時に沈降ビーズからのタンパクの溶出がうまくできていないと考えられ、尿素の割合を変えるなど、条件検討の予備実験を繰り返している。
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