2013 Fiscal Year Research-status Report
老人性難聴治療に向けた胸腺移植および胸腺移植の検討
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25462655
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
岩井 大 関西医科大学, 医学部, 准教授 (10232638)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲葉 宗夫 関西医科大学, 医学部, その他 (70115947)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 老人性難聴 / 早期老化 / SAMP1 / 蝸牛 / 胸腺移植 / 胸腺萎縮 / 細胞性免疫 |
Research Abstract |
早期老化・早期老人性難聴モデルマウスであるSAMP1を用い、当初の計画通り、実験を行った。 まず、2か月齢でマウスを購入し、直ちに聴力検査(聴性脳幹反応:ABR)を行った。5か月齢において再度聴力検査を行い、加齢性聴覚障害(老人性難聴)が生じていることを確認した。次に、2か月ごとに、同じSAMP1の胎児胸腺を上記の老人性難聴発症のSAMP1腎被膜下に移植した。およそ10か月齢において聴力検査(聴性脳幹反応:ABR)を行ったところ、当初の予想通り、胸腺移植により難聴が予防、さらに治療できており、聴力が5か月齢以前のレベルにまで改善していることが明らかとなった。SAMP1は早期に胸腺が移植し細胞性免疫機能の低下(免疫老化)が生じるが、胸腺移植による細胞免疫の賦活(若返り)が、難聴の治療として有効であった可能性を考える。 これらのマウスの蝸牛(内耳)の病理学的検査や、細胞性免疫機構の解析として、Tリンパ球の増殖能やフローサイトメトリーを早々に行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本学の研究棟は移転となり、昨年4月から新しい施設が用いられるようになった。これに伴い、実験動物の利用・飼育は一時不可能となり、くわえて、施設内の微生物チェックなどで飼育再開時期がずれ込んだ。また、飼育開始に際し、研修者側の動物施設利用申請、動物実験施設講習、新規動物実験計画の申請と認可などが至急で行われたものの、実際にマウスが購入・飼育でき、実験ができるようになったのは昨年7月下旬であった。したがって、実験はおよそ3-4ヶ月遅れで進んでおり、昨年度の実験が本年度にずれ込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
使用している早期老化・早期老人性難聴モデルマウスであるSAMP1は、上記のごとく5か月齢で難聴を示すため、長期の飼育が必要である(高月齢となったSAMP1の販売はしていない)。 今回の実験でひとまず、胎児胸腺移植が老人性難聴治療に有効であることが明らかとなった。そこで、次のステップとして難聴回復効果における胸腺の機能を検討する。すなわち胸腺移植が、成熟Tリンパ球産生の場として働いているのか、胸腺内に初めから存在していたTリンパ球を供給しただけなのかを検討する。このためには、胎児の胸腺移植(腎被膜下)と脛骨移植(皮下)の群や、反対に、放射線照射にてTリンパ球を不活化させた胸腺の移植を行う。 また、Tリンパ球の中のどの細胞(Tregなど)が、難聴の進行や改善と並行して増減するかを検討し、細胞免疫機構と蝸牛聴覚機構の間で橋渡しをする細胞を同定する。
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