2014 Fiscal Year Research-status Report
メンソール、カプサイシンが神経系を介して鼻炎、副鼻腔炎の病態に及ぼす影響
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25462671
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
都築 建三 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (50441308)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 慢性副鼻腔炎 / アレルギー性鼻炎 / 嗅覚障害 / 好酸球性副鼻腔炎 / 内視鏡スコア / 膝神経節 / 鼓索神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、全行程において十分なインフォームド・コンセントの上でアレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎に関する実験を行っている。臨床研究としては、内視鏡下鼻内手術前後の嗅覚検査、画像所見、術中所見をそれぞれ検討している。術前後の画像評価は、副鼻腔CT所見をLund-Mackay法に従ってスコア化した。術中は内視鏡の鼻内所見を終始デジタル録画した。症例ごとに鼻腔ポリープの有無、副鼻腔粘膜の性状、副鼻腔内の貯留液の性状、嗅裂粘膜の状態を明記している。今後はこの術中所見のスコア化を試みる予定である。嗅覚については、術前後に我々が提唱した紙一枚で簡易に評価できる「日常のにおいアンケート(SAOQ:self-administered odor questionnaire)」法(Takebayashi, Tsuzuki at al. Auris Nasus Larynx, 2011)を用いて嗅覚障害の自覚の程度を測り、嗅覚検査(T&Tオルファクトメトリー、静脈性嗅覚検査)で精査した。さらに、メンソールの嗅素を含む嗅覚検査法(Open Essence:嗅覚同定能力測定用カードキット:嗅覚研究用)も用いて、嗅覚障害を詳細に評価している。好酸球性副鼻腔炎は重症な嗅覚障害が生じやすく難治性である(都築、他:耳鼻免疫アレルギー、2014)。副鼻腔炎手術症例の術後経過を評価する指標として内視鏡スコアを提唱して、その妥当性と臨床応用に関する成果を英文論文として報告した(Tsuzuki K, et al. Novel endoscopic scoring system after sinus surgery. Auris Nasus Larynx, 2014.)。 基礎研究としては、嗅覚障害を伴う慢性副鼻腔炎で、術中に採取した嗅上皮におけるTRP family(TRPM8とTRPV1)の発言を調べる計画である。またラットおよびマウスを用いた動物実験で、膝神経節におけるメンソールおよびカプサイシンの受容体発現を調べた。正常および鼓索神経切断モデルの間に膝神経節におけるmRNA発現量の差を調べ、結果をとりまとめて英文論文へ投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臨床研究に関しては、概ね目標が達成できている。副鼻腔術後の経過を評価する指標として提唱した「術後内視鏡スコア」の妥当性および有用性に関して研究した成果が、英文論文として受理された。 基礎研究のTRP familyの発現に関しては、基礎研究室で大学院生も組織採取および実験系の計画を立ち上げるのに時間を要した。平成26年度には、大学院生が膝神経節の取り出し、切片作成、in situ hybridization法、免疫組織化学法を安定してできるようになった。今後も結果を重ねて再現性を確認した後に、成果を報告する予定である。 前年度できなかった本研究のテーマの一つ、臨床研究であるメンソールの嗅覚に関する研究は、メンソールを含める嗅覚検査の遂行も行えている。もう一方の基礎研究では、手術時の鼻組織の採取はできている。しかしメンソールに関する実験の計画を遂行する時間が取れずに実施できていない。基礎研究室で大学院生も動物の鼻副鼻腔組織の採取および実験系の環境を整えている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床研究に関しては、嗅覚障害の研究を継続して結果を集計する。嗅覚障害の原因疾患は慢性副鼻腔炎によるものが最も多く、嗅覚障害は慢性副鼻腔炎患者の60~80%に認めると報告されている。しかし、慢性副鼻腔炎の程度と嗅覚障害の程度を詳細に検討した報告は少なかったため、慢性副鼻腔炎手術症例における術前の嗅覚障害の程度と副鼻腔CT所見に関連があるか調査した。その結果を集積中である。さらにはメンソールの嗅素を含む嗅覚検査法を用いて嗅覚障害の状態を評価する予定である。術中所見をスコア化して副鼻腔手術の予後を推測できる指標を検討していく。好酸球性副鼻腔炎では、非好酸球性副鼻腔炎よりも嗅覚予後は不良であり(Oka H, Tsuzuki K, et al. Auris Nasus Larynx, 2013)、内視鏡スコアを用いて術後経過を経時的に評価してみる。 基礎研究に関しては、鼻副鼻腔疾患に対する内視鏡下鼻内手術の時に鼻組織(鼻腔ポリープなどの腫瘤病変、副鼻腔粘膜、下鼻甲介、嗅上皮など)を採取し、病理組織学検査で検討していく。基礎医学教室にてラットあるいはマウスを用いた動物実験の環境を早期に整える。膝神経節におけるメンソール、カプサイシン受容体の発現を組織学的に測定した結果を英文論文投稿中である。
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Causes of Carryover |
鼻組織を採取するための高額な内視鏡を購入しなかった。基礎実験系の計画に時間を要して、実験の遂行が遅れた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
鼻組織を採取するための高額な内視鏡、鼻組織採取のための手術器具、嗅覚検査キット、データ集計のための統計ソフトや保存のための電子機器類などを購入する。本研究に関する学会会費、参加費、旅費に充てる。
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Research Products
(15 results)