2013 Fiscal Year Research-status Report
ユビキチンプロテアソーム機能低下による網膜変性の解析
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25462702
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野田 実香 北海道大学, 大学病院, 助教 (10296668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 航介 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90296666)
外丸 詩野 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20360901)
小澤 洋子 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90265885)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | プロテアソーム / 網膜色素変性 |
Research Abstract |
初年度に当たる平成25年度は、プロテアソーム系機能不全マウスであるβ5t-Tgマウスの眼底所見の評価、網膜組織の形態学的検討をおこなった。 1、眼底所見:β5t-Tgマウスにおける眼底の特徴を検討するために、6ヶ月齢のβ5t-Tgマウスと同年齢の野生型マウス(CTR)の眼底写真を撮影して比較した。β5t-Tgマウスの眼底では、白斑、網膜萎縮、網膜動脈の狭細化などの特徴的な所見が認められた。白斑はヒト加齢黄斑変性で認められるドルーゼンに類似し、後者2つはヒト網膜色素変性で認められる所見に類似していた。この結果から、プロテアソーム機能の低下したマウスでは何らかの網膜病態を生じることが分かった。 2、網膜組織の形態学的検討:次に、β5t-Tgマウスの網膜を組織学的に検討した。6および9ヶ月齢のβ5t-Tgマウス網膜をHE染色で観察すると、ヒト加齢黄斑変性で認められるような網膜色素上皮下の沈着物ドルーゼンは観察されなかった。しかしながら、β5t-TgマウスでCTRマウスに比べて網膜厚が菲薄化していた。内顆粒層と外顆粒層の厚さをそれぞれ測定すると、内顆粒層は両者で差がなかったのに対し、外顆粒層は著明にβ5t-Tgマウスで菲薄化していた。CTRマウスとβ5t-Tgマウスの外顆粒層厚/内顆粒層厚の比は6ヶ月齢(p<0.001)でも9ヶ月齢(p<0.001)でも有意にβ5t-Tgマウスで減少していた。さらに視細胞外節の長さもβ5t-Tgマウスで減少していた(p<0.01)。本結果は、プロテアソーム機能が低下したβ5t-Tgマウスの網膜で網膜内層は保たれるのに対し、網膜外層つまり視細胞が経時的に変性していることを示していた。眼底所見を考慮すると、β5t-Tgマウスの網膜における変化はヒト網膜色素変性に類似していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度交付申請書に記載した年度研究計画を全て遂行し、学術的意義のある検討結果を得た。また、これまでの検討結果は平成25年に開催された国際学会Association for Research in Vision and Ophthalmology (Seattle, USA)において発表した。 以上より、研究計画はおおむね順調に進行していると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、プロテアソーム系機能不全マウスであるβ5t-Tgマウスの眼底および網膜組織において、ヒト網膜色素変性に類似した変化があることが示された。今後は、電子顕微鏡を用いた超微細構造の観察、および網膜電図を用いた機能的解析をおこなうことで、更なる解析をおこなう予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究計画は、眼底所見の観察と組織学的検討であったため、予定よりも低額の研究費で計画遂行が可能であったため。 次年度以降に計画している電子顕微鏡による検討や網膜電図による機能的解析などの研究費に使用する予定である。
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