2013 Fiscal Year Research-status Report
血液脳関門通過性オキシム類による有機リン中毒の解毒に関する研究
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25462845
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
太田 彦人 科学警察研究所, 法科学第三部, 室長 (40392261)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻田 宏一 科学警察研究所, 法科学第一部, 室長 (10334228)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 救急蘇生学 / 有機リン中毒 / 神経剤 / 解毒剤 / 血液脳関門 / オキシム |
Research Abstract |
ヒト有機リン中毒において、中枢神経のダメージを回復させ得る血液脳関門(BBB)通過性オキシムの開発の最初の段階として、初年度は、アセチルコリン(AChE)回復能とBBB通過能の両方が期待される、以下の4-置換長鎖脂溶性オキシム類を新規合成した(研究代表者)。1.4-PAD(側鎖炭素数10)、2.4-PAL(側鎖炭素数12)、3.4-PATd(側鎖炭素数14)、4.4-PAHd(側鎖炭素数16)。前記1~4のうち、解毒剤としての投与に必要な水溶性を確認したところ、1は水溶性を示したが、2以降は水溶性が減少し、4は水溶性を失った。またBBB通過活性の測定に必要な透析膜通過実験を行ったところ、1は透析膜通過能を示したが、2以降は透析膜通過能が減少し、3以降は透析膜通過能を失った。以上から、1.4-PAD(側鎖炭素数10)及び2.4-PAL(側鎖炭素数12)の2つが解毒剤となり得ると考えられたため、この2化合物を用いてラットを用いたBBB通過能試験を行った(研究代表者、連携研究者)。ラット脳線条体にマイクロ透析プローブを固定し、各オキシム類を致死量の1/10投与し、細胞外液及び血液を経時的に採取し、オキシム類の細胞外液中濃度と血中濃度を比較、BBB通過能を算出した。その結果、1.4-PAD(側鎖炭素数10)が十分なBBB通過能を示した。2もBBB通過能を示したが、僅かであった。以上から、今回新規に合成したオキシム類中、4-PAD(側鎖炭素数10)がBBB通過性有機リン中毒解毒剤として最も有望と考えられた。今後は、新規合成オキシム類のAChE回復能を測定し、さらに有機リン中毒状態にしたラットへのオキシム類静注による解毒実験を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では初年度: 新規オキシム類の合成及びAChE活性測定、2年目: 新規オキシム類のラットBBB通過活性測定、3年目: ラットを用いた解毒実験、の予定であったが、順番を変更し、初年度: 新規オキシム類の合成及びラットBBB通過活性測定、2年目: 新規オキシム類のAChE活性測定、3年目: ラットを用いた解毒実験、となった。最も難航が予想されたラットBBB通過活性測定を先に終えたことで研究計画の不確定要素がなくなり、また早期に解毒剤候補を絞ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回新規合成した4つのオキシム類について、2年目にAChE活性を測定し、その構造活性相関を明らかにし、今後の新規開発の参考となるようにする。 3年目には、今回合成した中で最も有望と思われた4-PAD(側鎖炭素数10)、及び過去に合成した中で最も良好な結果を示した4-PAO(側鎖炭素数8)について、解毒作用の実証を行う。すなわち、先に開発した、通常施設でも使用可能なサリン類似有機リン系毒物「INMP」を投与して中毒状態に陥ったラットに4-PADまたは4-PAOを投与し、脳内AChE活性の回復度を測定し、解毒剤としての能力を実証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
20万円を計上していたノートPCの購入が不要となり中止したため(所属研究期間より、WindowsXPサポート中止によるノートPC配布があった)。その分を、26年度計画におけるAChE活性測定用の酵素購入に充てる。 H26年度計画の70万円に加え、次年度使用額分は、ヒト赤血球由来アセチルコリンエステラーゼ500単位×2(18万円)の追加購入に充て、新規オキシム類のAChE回復活性測定に用いる。
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Research Products
(1 results)