2015 Fiscal Year Research-status Report
歯周病原細菌による口腔癌の臓器転移に関する基礎的研究
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25462850
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
稲葉 裕明 岡山大学, 大学病院, 講師 (70359850)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 健司 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (00290908)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | P. gingivalis / 口腔癌 / シグナル伝達 / 癌浸潤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本補助事業では、歯周病菌P. gingivalisによるヒト口腔扁平上皮癌細胞の浸潤能への影響について検討している。平成25年度から27年度までに、P. gingivalisに感染された口腔癌細胞は、前駆体マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP9)の産生と活性化が亢進され、癌浸潤能が促進された。またP. gingivalis感染が影響をおよぼす癌浸潤に関連する受容体ならびにシグナル伝達経路を明らかにした。
P. gingivalisに感染した口腔癌細胞株は、protease-activated receptor 2 (PAR2) が活性化された後、p38/HSP27ならびにERK1/2-Ets1経路がリン酸化された。同時にPAR4が活性化された後、IkBのリン酸化とNFkBが核移行した (NFkBの活性化)。その一方で分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼの中でもJNKは活性化されなかった。PAR2, PAR4また下流分子であるHSP27, Ets1の役割はsiRNAノックダウン細胞を用いることで証明した。またp38とERK1/2は阻害剤の使用により証明した。これらのことから、前駆体MMP9の産生が亢進は、複数経路の活性化が同時に起こる必要があることを明らかにした。さらに、分泌された前駆体MMP9は、細胞外に存在するP. gingivalisにより活性化され、口腔癌細胞の浸潤を促進することが解明された。
細菌側の毒性因子は、線毛ならびに各種プロテアーゼノックアウト株を用いることで明らかにした。rgpならびにkgp2種類のプロテアーゼにより、PAR2とPAR4が活性されp38とERK1/2がリン酸化されMMP9の前駆体が産生されることが明らかになった。また分泌された前駆体MMP9はrgpとkgpにより活性化され、口腔癌細胞の浸潤を促進することが明らかになった
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本補助事業期間中に2度にわたる転籍(平成26年度と平成27年度)があり、研究室のセットアップを繰り返したことにより、平成27年度に予定していた細菌側病原因子の抑制物質同定を行えなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
特定した病原因子を抑制することが出来る素材の探索を行う(現在、候補はリストアップ済み)。素材の効果は、細胞浸潤能、マトリックスメタロプロテアーゼの活性ならびに関連シグナル伝達への影響を確認する。これらの結果は、今年度中に国内・国際学会で発表し、論文投稿を行う予定。
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Causes of Carryover |
本補助事業期間中2度にわたる転籍(平成26年度と平成27年度)があり、研究体制のセットアップを繰り返し、当初計画の遅延が認められたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
口腔癌の浸潤を促進する菌側の病原因子は確定できている。病原因子に対する抑制物質の同定を行い、細胞浸潤能、ザイモグラフィーによるマトリックスメタロプロテアーゼ9の抑制ならびに関連するシグナル伝達の抑制を確認する。本年度中に学会発表ならびに論文投稿を行い、それに付随する追加実験を行うこととしたい。
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