2014 Fiscal Year Research-status Report
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25462873
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
滝戸 次郎 昭和大学, 歯学部, 助教 (00197237)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アクチン / 破骨細胞 / 細胞融合 / ポドゾーム |
Outline of Annual Research Achievements |
アクチン超構造体(zipper-like structure)の破骨細胞融合における役割を明らかにするため、その構造を解析した。マクロファージ様培養株細胞RAW264.7細胞から誘導した破骨細胞様細胞へEGFP-actinを導入しアクチンの動的構造を生細胞観察した。その結果、二つの細胞接触面から細胞体側へ対称的なアクチンの流れ(Retrograde actin flow)が観察された。その流速は、3.3 μm/minであった。免疫蛍光抗体法を用いた観察から、ポドゾーム内の張力応答分子と考えられるZyxinタンパク質が細胞接触面に蓄積することが判明した。また、張力発生に関与する収縮タンパク質Nonmuscle myosin IIがzipper-like structureの外側に局在する事が分かった。以上の知見から、zipper-like structureにおいてアクチンの重合反応が細胞を押し付ける力を発生し、それに釣り合う力の発生にアクトミオシン系の収縮が関与する可能性が示された。これらの実験結果および考察は、破骨細胞融合におけるzipper-like structureの役割の理解を大いに進めるものであった。 また、固定細胞を用いてポドゾームを構成するタンパク質群の分布を、ポドゾームクラスター、ポドゾームベルト、zipper-like structure間で比較した。特定のタンパク質の局在がそれぞれの構造を特徴づけることが分かった。F-アクチンの密度分布を解析した結果、ポドゾームの集団的行動(Collective behavior)がより高度な、そして大きな超構造体を形成する要因であるとの新しい知見が得られた。この研究を推進すれば、細胞内における小器官形成の一つのモデルを提示できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度の成果である破骨細胞融合に対するアクチン細胞骨格シグナル系の関与を論文発表した。(Takito et al: Regulation of Osteoclast Multinucleation by the Actin Cytoskeleton Signaling Network. J Cell Physiol. 230:395-405, 2015. doi: 10.1002/jcp.24723)。 本年度は、zipper-like structureの動的構造を明らかにする目的で、アクチンの動的構造を調べ望外の結果を得た。予想通りzipper-like structure内でアクチン由来の蛍光強度は重合および脱重合に起因すると考えられる特有の周期を持つ振動を示した。驚くべき事にアクチンはzipper-like structure内で一方向性に流動していた。この現象は、他細胞で見られるlamellipodia内でのretrograde actin flowあるいは細胞底面で観察されるactin waveと類似していた。この知見は新規であり、想定していた研究達成度を遥かに上回った。 また固定細胞においてzipper-like structureを免疫抗体染色法を用いた共焦点レーザー顕微鏡で解剖学的に3次元再構成する実験に着手した。この実験から、zipper-like structureの基本構造は2.9μmの高さを持ち、放射軸(radial)に沿った4.2 μmのアクチン中心部が接線軸(tangential)に繰り返し構造を持つ事が判明した。研究は予定通りに進行したが、Z軸方向の解像度が低く、満足する結果が得られなかった。今後、他の方法を模索してより高解像度の3次元像を得る必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
zipper-like structureの中心部構造はアクチンが豊富過ぎるため、従来の透過電顕あるいは走査電顕観察では無構造に見え、有用な情報が得られない。その弱点を回避するため、筆者は共焦点レーザー顕微鏡を用いて、免疫抗体法あるいは蛍光強度測定からzipper-like structureの構造解析を行った。同顕微鏡の名目上のZ軸解像度は0.5μmであるが、実際の解像度は1μm程度であり、zipper-like structureのZ軸の構造を解析するには不十分であった。この点を克服するため今後、Z軸の解像度50 nmを持つ超高解像度共焦点レーザー顕微鏡を用いて研究を継続する予定である。この実験により、細胞外基質接着部とActin flowを生起する領域を分離することが目標である。問題点として、超高解像度像が得られる領域は、細胞底面から上方に1.5 μmに限定される。この条件でzipper-like structure の全体を対象とできるのか、検討が必要である。50 nmの解像度で構造決定が出来れば、ポドゾームと言う構造単位(1μm)から、いかにしてメゾスケール(~数100 μm)の構造が形成されるかの原理に迫る事が期待される。また、共焦点レーザー顕微鏡では生細胞観察が可能であるため、時間軸に生きている構造を測定できる。来年度はアクチン分子単独での構造解析を試みるが、将来はアクチンと他分子との2重蛍光観察を実施し、振動する構造体の詳細を究めたい。これまでの成果から、zipper-like structureは、準安定状態にある振動する散逸構造であると推定される。
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Causes of Carryover |
今年度3月分支出額が確定しておらず、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費および旅費で支出される。
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Research Products
(2 results)